働き方改革のゴール<2019・10・05>
働き方改革関連法が4月1日に施行され、長時間労働の是正に向けた取り組みが本格化している。
改革の目的は、社員にとって働きやすい、働きがいのある職場を作っていくことだ。こうなると社員は自ずと頑張るだろう。人口が減少していく日本にとって、社員一人ひとりの士気は経済を維持するために欠かせない。
ところが、実際の現場では、残業禁止など法律の定める手段ばかりが強調されてはいないか。目的を考えることなく、形だけを整えようとすれば、逆に働きづらい職場になってしまう。
こうした中、先月上旬、「人を大切にする経営学会」の全国大会に参加した。
この学会は、「日本でいちばん大切にしたい会社」の著者で、元法政大学教授の坂本光司氏が設立。「業績や勝ち負けではなく、人をトコトン大切にしている企業こそが、好不況にぶれず好業績を維持・継続している」という先行研究をもとに、そうした経営の普及を目的としている。坂本氏によると、社員を大切にしているかは、社員を解雇しないことをはじめ、公平公正な評価、管理職の部下育成、福利厚生など様々な取り組みから判断をするという。
大会に参加して、これらの取り組みを実践する経営を多く学んだ。どの会社も社員の本気を引き出し、発展を遂げている。そうだとすれば、働き方改革の目指すべきゴールは「人を大切にする経営」なのではないかと感じた。
仕事量も仕事の仕組みも変えずに、早く帰ることばかりを要求する会社は、社員を大切にしていると言えるのか。社員の士気を上げられるのか。そうではなく、経営者が休みを取得するための仕組みを社員と共に考えることこそ重要だろう。
自社の働き方改革は、人をトコトン大切にすることにつながっているのか。この視点から今一度考え直したい。
(初出)2019年10月5日読売新聞地域面「しなの草子」『働き方改革のゴール』
関連リンク
(初出)『利便性の代償』「しなの草子」2019年8月17日読売新聞地域面朝刊
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