2019年の展望~成長持続も勢い鈍化、次世代に向けた礎づくりを~<2019・01・17>
ペース鈍化も、成長が持続する日本経済
2018年の日本経済は、世界経済の拡大による輸出の増加が続き、企業収益の改善も進んだ。受注の増加と収益の改善、及び人手不足を受け、増産や省力化を中心とした投資も伸びた。消費面も自動車販売など個人消費は底堅い動きとなった。
四半期毎の実質 GDP(国内総生産)をみると、1-3月期は前期比△0.3%、4-6月期は同0.7%、7-9月期は同△0.6%となっている。
2019年の日本経済は、世界経済の回復ペースが鈍化する影響を受け、成長は維持しつつも勢いはやや減速するとみられる。成長持続の中、人手不足は依然続くと予想され、省力化投資など設備投資は引き続き高い水準を維持する見通し。また、10月に消費税増税が予定されているが、懸念される導入後の消費冷え込みに対しては、政府の大掛かりな反動減対策が見込まれ、影響は小幅にとどまるとみられる。そのほか、平成から新元号への改元や、G20の開催などイベントの多い年となることから景気にプラスの作用を及ぼすだろう。
一方、海外は米中貿易摩擦、中東・北朝鮮情勢、米国の金融引き締め、イギリスの EU離脱など、各国の対応いかんでは貿易を減少させ景気を下振れさせるリスク要因が多い。特に昨年から進行している米中間の貿易摩擦がさらに高まった場合には、日本の景気を下押しする可能性は大きい。
省力化など設備投資も維持され、回復が続く長野県経済
長野県経済も前年に比較すると受注量は落ち着くものの、回復の持続が見込まれる。米中貿易摩擦の影響はあるものの、足元世界の経済成長は続いており、長野県経済で大きなウェイトを占める電子部品・デバイスや産業用機械は高水準を維持するとみられる。また積極的な設備投資も維持されるだろう。消費面では、消費増税に伴う軽減税率への対応に伴うコスト面の増加や節約志向の強まりが懸念される。
主要17業種の天気図は薄日以上が10業種、5業種でやや下降の見通し
2019年の長野県主要17業種を展望すると、18年に続き、薄日以上が10業種と順調を維持する。設備投資が続く中で、「工作機械」、「機械器具卸」、「民間工事」などが引き続き「晴れ」または「薄日」の見通し。国内外の安定した自動車関連需要等により、「自動車部品」、「プラスチック製品」は順調に推移する見込み。一方、中国経済の減速を受け、「半導体製造装置」、「産業用機器」、「電子部品・デバイス」、「光学・計器」は、高水準を維持しつつも下降するとみられる。また、消費税増税に伴う消費者の節約志向の強まりや軽減税率への対応コストが増加する「大型小売」、前年に引き続き工事量の増加が見込めない「公共工事」は「小雨」の見通しとなっている。
生産面が落ち着く今年は、次世代に向けた礎づくりを
世界経済の成長ペースが鈍化することから、生産の勢いはペースダウンする。また、海外でのさらなる下振れリスクが懸念されるほか、国内は人手不足が続くなど構造的な課題にも直面している。しかし、今年は新たな元号が始まり、祝賀ムードに包まれた年になるとも言える。そう考えるなら、今年は、昨年までの喧騒とは一線を画した落ち着きの中、新たなスタートを切るのに相応しい年と捉えられるのではないか。新分野へ挑戦するための投資や、研究開発投資など次世代を見据えた礎づくりの年にしたい。
(初出:長野経済研究所『2019年長野県主要17業種産業見通し』「経済月報2019年1月」)
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