ものづくりナガノの底力~企業集積が生み出す競争力~<2018・11・12>
長野県の強いものづくり企業
時々このコラムでもご紹介をしていますSBC信越放送のテレビ番組「明日を造れ!ものづくりナガノ」も、スタートしてから10年目を迎え、先月は121回目の放送となりました。
121回のゲストとして出演いただいたのは、佐久市に本社を置く日本ハルコン株式会社の岡本恒生副社長です。
日本ハルコンはセキュリティゲートの専門メーカーとして、国内でおよそ2割のシェアを占めます。
同社では、1990年代頃まではスキー場のスキーゲートが主力製品でしたが、スキーブームの終焉に伴い、スキーゲート需要の急減に見舞われます。途方に暮れる中、起こったのが2001年の米国同時多発テロです。これにより、世界的にセキュリティ強化に向けたニーズが高まりました。
このニーズをゲートという切り口から捉え、スキーゲート製造のノウハウを生かし、セキュリティゲートを開発したのです。
ニーズに対応した事業展開が継続可能な企業を作る
ICをかざすとドアが開くセキュリティゲートは、企業の各フロアでの従業員の入退場管理や、空港の搭乗ゲートなどで外部からの不正侵入防止などを目的に多く使われています。このような機能ゆえ、2020年の東京五輪でも、関連施設での需要が見込まれています。
さらに、近年の台風など自然災害多発によるビルでの水害リスクに対し、30センチまで浸水しても壊れないゲートを開発しています。また、ゲートを作るためにはセンサ技術からソフトウェア、狂いのない開閉の技術などが必要であり、これらの技術は省力化装置の製造にも転用できます。
現在、人手不足で省力化装置へのニーズは高まっていますが、特に高齢化に悩む農業分野では深刻です。そこで、手のかかる梱包作業用に省力化装置を開発し、農家への販売を開始しています。
自社の強みをテロ防止や水害、人手不足という社会のニーズに対応させるという事業展開が同社を支えています。
「明日を造れ!ものづくりナガノ」の実践
日本ハルコンはゲートの専門メーカーとはいえ、研究開発型企業として設計に特化したファブレス企業で、製造部分は県内企業に委託しています。「ものづくりナガノ」の強みを結集して自社の強みに変えていると言えます。
その理由について岡本副社長は「長野県内には、世界的にも優れた加工技術を持つ企業が集積している。これだけの企業が近くにあるのなら、その力を貸していただくことで、自社は限られた資金や人を研究開発に注ぎ込むことができ、特化することでニーズに沿った製品の開発が可能になる」と述べています。そして「弊社は県内の素晴らしいものづくり企業があってからこそ成り立っている。今後もこれら協力企業とさらに連携を密にして、世の中の『困った』というニーズを解決する機器やロボットを開発していきたい」と展望されます。
この企業の他にも県内製造業を訪ねると、県内の厚いものづくり集積が自社の強みの根源と述べられる企業は多くいます。
県内企業の皆さんは、是非、この長野県に立地するという優位点を改めて確認しながら、連携を密に、長野県産業をさらに強固なものにしていただきたいと思います。
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