長野経済研究所主催「人手不足への対応を考えるシンポジウム」より<2018・08・10>

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最終更新日: 2018年8月10日

7月30日に「人手不足への対応を考えるシンポジウム」を開催しました

   当研究所主催の「人手不足への対応を考えるシンポジウム」を7月30日に開催しました。
  先ず、(株)XEEDのビジネスアナリスト中川美紀さんに基調講演をしていただき、それを受け「人手不足への対応を考える」をテーマにパネルディスカッションを行いました

基調講演「人が採れ、人が辞めない経営」

 中川さんの基調講演では「人が採れ、人が辞めない経営」として、企業が「人を採る」ためには、「徹底的な投資」が必要というポイントを教えていただきました。それは予算や期間が終わったから終わりではなく、結果が出るまで、お金、時間を投入すべきとのことです。採用の場合、実際に人が採れなかったら、それまでの投資効果はゼロになってしまうからです。そして、他社に先んじて行動し、ネットや口コミ、学校との連携など、採用手段においても徹底した投資を行うことが肝要です。
  次の「人が辞めない」、つまり人が定着する企業像を示されました。働く人に合った柔軟な勤務体制や福利厚生など「ケア」にあたる部分はもはやマストなのだそうです。これに加え「フェア」がなくては人材は定着しないと、「ケア」と「フェア」が人材定着の両輪だと指摘されました。頑張る人、頑張ろうとする人を「フェア」に評価し、どんどん報酬とチャンスを与えること。それにより従業員の満足度は向上し、モチベーションが上げることで定着率が高まります。今や「フェア」でない企業からは、優秀な人材が去ってしまう時代なのです

「人手不足への対応を考える」パネルディスカッション

 長野吉田工業では、生産性を向上させるため、検査工程なども自動化する省力化投資を積極的に行っています。また、仕事毎のスキルチェック表や資格手当を新設し、それを目標に多能工を育成することで生産性を上げています。労働環境を改善するために、柔軟な勤務時間の導入で女性が働き易い環境を作っている他、食堂の一角で体操ができるような社員の健康を考えた経営も実施しています。その結果、離職率もとても低くなっています。採用対象拡大としては、3年前からベトナム人を採用しており、立派な戦力となっています。

  岩野商会では、「自社都合でのリストラをしない」ことを理念としており、早い段階から社員を社会保険に加入させ、完全週休2日制を導入するなど、労働環境を整えてきました。また、人材育成にも熱心で、「人を育てる場としての企業でありたい」との思いから、職業訓練学校を自社で設立、運営しています。そのため、建設の経験のない普通高校からも生徒が採用でき、長年の採用実績が学校との太いパイプとなっています。自社のソフトボールチームもよい企業風土を培うことに役だっています。同社でも、毎年3人ずつベトナム人を技能実習生として受け入れています。

  ホテルさかえやでは、前回のコラムでも紹介したように、障がいのある人や不登校となった人も働ける仕組みを作ることで、戦力としています。これらの人達は、コミュニケーションを苦手とする場合が多いため、コミュニケーションが極力いらない仕組み、つまり、人に都度聞かなくても仕事ができる仕組みを作ってきました。社長一人ではできることに限界がある。そのような時には、たとえ障がいを持つ人でも、十分に社長の仕事を補佐してもらえる。「どのような人にも必ずできる仕事がある」と教えていただきました。

  3社とも「社員を大切にする」という共通点があり、それを根底に様々な取り組みを行っていることがうかがえました。それが良い労働環境を作り出し、多様な人材を戦力化できることにつながっています。
  これが中川さんの言われる「ケア」であり、必要十分条件で言う所の必要条件なのでしょう。これを基盤に十分条件である「フェア」な仕組みを導入し、磨き上げていくことが、「人手不足への対処として」今後さらに求められるのだと思います。

 

 

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