ダイバーシティ経営で人手不足を乗り越えよう<2018・07・03>

印刷

最終更新日: 2018年7月3日

深刻化する人手不足に対し、労働環境改善や労働者の対象拡大

   企業の人手不足状況は、なかなか改善の兆しが見えません。7月2日に発表となった日銀短観6月調査によれば、長野県内企業の雇用の過不足状況はマイナス36%ポイントと相変わらず厳しい状況であり、先行きも39%ポイントとマイナス幅を更に広げる見通しです。
  当研究所の県内企業への調査でも、人手不足を訴える企業は約半数となっています。そして、その影響としては、「需要増への対応が難しい」、「労働環境が悪化しつつある」など深刻な回答が多く寄せられています。
  そのため、県内企業は
、省力化投資を進めたり、賃金の引き上げ、さらには、働く対象を女性や高齢者、外国人等に拡大し、現状を乗り切ろうとしています

働く人の対象を拡大~障がい者雇用は企業の責務

 働く対象の拡大としては、障がい者も含まれます。ハンディを持つ障がい者に労働参加してもらうことで、出産後の女性や高齢者の労働参加率も上ります。なんとなれば、出産後の女性は多くのハンディがあります。また、どのような人でも、年を取れば体が衰え、一定のハンディを持つことになるでしょう。障がい者雇用は、そのような人にも労働に参加してもらうための一里塚とも考えられます。
  さらに一寸視点を広げるなら、一定の確率で必ず障がいを持つ人は社会に存在します。健常者とは、たまたま健常であるにすぎないという存在なのです。従って、健常な人や企業が障がいのある人に活躍してもらう場を作るというのは、当然の責務と言えましょう。
  そうした視点から、障がい者雇用を進めるのが、渋温泉にある老舗「ホテルさかえや」です

求められるダイバーシティ経営~ホテルさかえやの場合

 ホテルさかえやでは、不登校の若者らに職場体験の場を提供し、就労や自立の支援に力を入れています。社長の湯本晴彦氏は、障がいを持つ弟が引き籠りとなった経験を持ちます。その経験から、どのような人であろうと「できること」は必ずあり、それを活用できる職場作りの必要性を感じていました。
  そこで5年前から自立支援事業を手掛け、2015年には引き籠りとなった生徒に高校卒業の資格を取らせるため、上田市のさくら国際高等学校と連携し、フリースクールも開校しました。生徒は旅館に泊まり込みで働きながら、勉強に励むことになります。学生は高校3年間を住み込みで働いているため、一通り旅館での仕事を覚えます。同社では、その学生の人柄も分かっているため、卒業後に即戦力として採用することもあるそうです。
  また、障がいのある人でも、健常者と同じように仕事ができるよう「目で見てわかる」仕事の仕組みを整えています。例えば、消耗品の在庫が減った場合、「どこまで減れば」「どれぐらい」「どこに」発注するのかを誰でも明確に分かるように仕組みづくりがしてあります。これらにより、社員は「自分でも仕事ができる」という自己肯定感を高め、今では、お客様に高付加価値のサービスを提案し、受け入れてもらえるなど、旅館の生産性の向上にも寄与できるようになっています

「人手不足への対応」を考えるシンポジウムを2018年7月30日に開催

 県内にはこのように、人の可能性を信じ、多様な人材を戦力として育成することで人手不足と戦っている企業が少なくありません。
  長野経済研究所では、そうした企業に人手不足への対応をお聞きするため、7月30日(月)14時より、「人手不足への対応」を考えるシンポジウムを開催する予定です。
  場所は当研究所4階のAV教室です。登壇企業は、今紹介した有限会社ホテルさかえや湯本晴彦社長のほか、佐久市の製造業長野吉田工業株式会社樫山徹社長、長野市の建設業株式会社岩野商会岩野彰社長の3名です。また、基調講演として、株式会社XEEDのビジネスアナリスト中川美紀さんから「人が採れ、人が辞めない経営」をお話いただく予定です。
  各企業の課題や対応から、経営のヒントとなる情報も多く得られるのではと思います。お時間が合いましたら、是非、お越しいただければと思います

 

 

 

関連リンク

 

 

 

このページに関するお問い合わせ

産業調査

電話番号:026-224-0501

FAX番号:026-224-6233