高水準の求人倍率と人手不足問題を考える~求められる人を大切にする経営~ <2018・04・13>

印刷

最終更新日: 2018年4月13日

高水準で推移する有効求人倍率

   平成30年2月の有効求人倍率は1.65倍と1月の1.70倍よりは下がったものの、依然高い水準にあります。有効求人倍率というのは、職を探す人一人に対して何人分の求人があるかという数値ですから、1倍を超えると良好という判断になります。長野県では、求職者1人に対し1.65社の求人があるということです。
 これは職を探す人にとっては沢山仕事があることになりますが、企業にしてみればそれだけ人が足りなくて困っているという面もあるでしょう。

約半数の企業が人手不足を訴えている

 長野県内でも、数年前から人手不足を訴える企業の声は多くなっています。長野経済研究所では、この人手不足の現状と対応を探るべく、平成29年7月に「長野県内企業の人手不足の現状と影響に関するアンケート調査」を行いました。まず、「従業員の過不足状況」について尋ねてみますと、約半数に当たる48.3%の企業が「不足」との回答をしています。更に「人材の確保状況」でも48.5%と半数の企業ができていないとの回答です。
 「今後3年程度の充足見通し」についても、14%は「一層の深刻化」、45%は「慢性的に人手不足が継続」との回答で、人手不足解消の目途が立たない企業の窮状がうかがえます。

人手不足への対応は「労働条件の改善」

 こうした中、「人材の確保・定着に向けた対応策」については、「業務の効率化を高める」という回答が最も多く、次いで「労働条件の改善」が挙げられています。現状でも、人手不足は深刻ですが、離職が更なる人材不足に輪をかけていることも推察されます。
 先の長野労働局の資料を見ても、求職者の半数近くは「在職者」というのが現状です。慢性的に残業を強いられたり、風土が悪い職場は、労働者から見限られる時代になっているのではないでしょうか。
 離職を食い止め、さらに外部から新たな人材を確保するためにも、労働条件、職場環境などの働く条件を改善することは企業にとって喫緊の課題となっているのだと思います。

求められる「人を大切にする経営」

 ここで思い出されるのが「日本でいちばん大切にしたい会社」の著者である元法政大学大学院の坂本光司教授(3月でご退官)の「経営学」です。長野経済研究所でも昨年10月4日にお招きし、講演会を開催しました。また、先月17日には法政大学での最終講義ということで、集大成の「経営学」を再度学んできました(今後も「人を大切にする経営学会」に軸足を移され、変わらぬご活動をされる予定とのことでした)。
 坂本教授の経営学は、「企業の目的は『人々の幸せ』であり、業績は手段に過ぎない」というものです。
 およそ40年に渡る企業指導、企業研究で約8,000社の企業の調査を行った結果、1割の企業は赤字に陥らない景気超越企業であることを分析されています。それらの企業の共通点は幾つかありますが、最も重要なことは「人を大切にする経営」ということです。この人というのは5人を指し、先ずは「従業員とその家族」、次いで「取引先とその家族」、3番目は「現在顧客と未来顧客」、4番目が「地域住民とりわけ障がい者」、そして、5番目が「株主、出資者」ということです。

何故、社員が一番なのか

 何故、社員が一番なのでしょうか。坂本教授は次のように語られます。「お客様が大切なのは言うまでもない。しかし果たして社員満足度の低い会社が、お客様が喉から手が出るほど欲しくなるような魅力ある商品・サービスを提供できるだろうか。お客様が大事だからこそ、社員はもっと大事。組織や上司が自分のことを大切に思って支援し、尽力してくれたら、社員はそれに応えようと一生懸命に働くはず」。こうした会社であれば、社員は会社を辞めようとは考えないでしょう。
 人手不足の今こそ、人とどのように関わるのかといった「経営の質」が問われているのだと思います。

 

 

 

 

 

関連リンク

 

 

このページに関するお問い合わせ

産業調査

電話番号:026-224-0501

FAX番号:026-224-6233