地方創生中間報告~長野県野沢温泉村の事例より~<2018・02・14>

印刷

最終更新日: 2018年2月14日

2017年の長野県人口は17年ぶりの転入超過

  1月末に長野県から、2017年の県内の人口動態が発表になりました。県民全体では1万1,714人の減少でしたが、県内への転入者数が転出者数を247人上回る「転入超過」となりました。これは17年振りの快挙で、県内77市町村のうち9市10町14村の33市町村が転入超過を果たしています。
 我が国では人口減少・高齢化への対応策として、2015年に国主導で地方創生が始まっています。全国の各自治体では「総合戦略」を作成し、仕事を作り、雇用を生み、地域に暮らす人を増やすための戦略を立て、施策を講じてきました。その取り組みが功を奏したものと、評価できるかもしれません。

国際的リゾート地「野沢温泉村」の地方創生

 国際的リゾート地として有名な野沢温泉村は、2017年には49人の転入増となっています。
 「観光地の再生」を公約に掲げ、旗を振ってきた富井俊雄村長は「転入増というのはあくまでも結果論で、地域の経済再生なくしてはあり得ない」と話されます。富井村長は「住民の暮らす場所と温泉とスキー場が一体化している」という村の強みに注目し、その「村の日常」が魅力となるようコンパクトシティ化を推進してきました。
 この魅力に魅せられ、外国人も現在100人程移住しており、彼らが経営する宿も50件を超えます。皆地元の住民以上に野沢温泉村のことを研究しており、村の強みを活かした経営を行っています。これらの取り組みが新たな観光客を呼び込み、とりわけ長期滞在型観光客の増加につながっています。長期滞在型観光客が多いということは、地域に落ちるお金も多くなるということで、他の産業も元気になっています。野沢温泉村では農業従事者も多いのですが、観光客が増えることでホテル旅館での農作物の需要も増えています。
 また、村では、外国人観光客の宿泊分離のニーズに応え得るレストランがなかったため、村営でのレストランを立ち上げた経緯があります。しかし、観光客が増え、事業採算が取れるようになったことから民間でのレストランも何軒か新設されています。村の主要産業が強くなることで、他の産業も潤う「地産地消」の仕組みが出来上がっており、これが更に村の魅力を高めています。

移住者の受け皿となる「住まい」と「教育」

 これらのレストランを経営している多くは、I・Uターンで来た移住者です。
 彼らが比較的容易に移住できたのは、村が戸建て住宅やマンションを用意したことです。村の「総合戦略」では、31年までに10世帯を移住させることを目標としていましたが、既に14世帯が埋まっています。移住ニーズに応えるために、さらに戸建てを5棟建築する予定です。
 移住者は若い世帯が多く、地域での子供の教育も気になるところですが、村では「野沢温泉学園」という幼稚園・保育園から中学校までの一貫教育を行っています。全ての学年で「スキー」を授業に取り入れることで、健康でスキー好きな子供たちを育てています。スキーを好きになった子供たちは、次世代の野沢温泉村を担っていくことでしょう。また、学園では、英語の授業も取り入れていますが、あくまでも自分の考えをしっかりと伝えられる能力を付けるためで、受験対策ではありません。しかし、この学校には外国人の子供も多く通っていることから、村の子供たちは自然に英語も身に付いていくようです

住民が愛おしく思うモノは何なのか

 今回の地方創生では、「まち・ひと・しごと創生」とも称されています。地域の暮らしやすい環境が人を呼び込む訳ですが、そのためには仕事があることが必要です。仕事を確保してからでなければ、簡単に移住する訳にはいかないでしょう。
 野沢温泉村のように、村の主要産業である「観光業」を元気にし、働ける場所ができれば人の受け皿ができます。富井村長は「住民の暮らす場所と温泉とスキー場が一体化している」という強みを活かし、村全体を観光資源として磨き上げました。それゆえに、村内での飲食店経営が成り立ち、移住者も増えるという好循環が生まれたものと思われます。
 地域の強みは、地域それぞれです。それは住んでいる我々が、最も知り得る情報であるはずです。
 地方創生4年目を迎え、「住民が愛おしく思うモノは何なのか」。今一度思いを巡らせ、強みを見つけ、磨き上げることが求められています。

 

 

 

関連リンク

 

 

このページに関するお問い合わせ

産業調査

電話番号:026-224-0501

FAX番号:026-224-6233