AI時代に今に生きる「伝統工芸」を考える<2018・01・22>

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最終更新日: 2018年1月22日

伝統工芸の匠と語り合った「信州ブランドフォーラム」

  先月ご報告をしました「信州ブランドアワード2017」の受賞式の後、フォーラム「信州の工芸を今の生活に」が実施されました。私もファシリテーターとして参加し、伝統工芸を担う企業の代表に「時代に対応した生き残り戦略」をうかがいました。
 話をお聞きしたのは、富山県高岡市の鋳物メーカー 株式会社能作の能作克治社長と、塩尻市木曽平沢で木曽漆器を手掛ける有限会社ちきりや手塚万衛門商店の手塚英明社長のお二人です。
 今回はフォーラム「信州の工芸を今の生活に」から、今に生きる伝統工芸について考えたいと思います。

素材とデザインを重視し「鋳物」をブランド化した(株)能作

 (株)能作は1916年創業の鋳物メーカーで、社員全員が鋳物職人という匠集団です。創業当時は仏具、茶道具、花器を製造していましたが、今の生活に密着したデザイン性の高いテーブルウェアやインテリア製品を開発することで、新たな需要を開拓してきました。キーワードは「デザインと素材」。デザイナーと連携し、自社製品をトータルデザインで統一し、素材の特性を活かすことで「能作ブランド」を作り上げています。柔らかい錫(すず)の特性を生かした「曲がる金属の食器」が評価され、2013年には「第5回ものづくり日本大賞 経済産業大臣賞」を受賞しています。
 「工芸品は人の感性に訴えるもので、ぬくもりを感じさせるもの。その価値に気付き、最近では多くの若者が会社の門を叩かれます」能作社長は、伝統工芸品が顧客の心を捉える理由(わけ)について語られました。

日常生活で使える「漆器」を届ける(有)ちきりや手塚万衛門商店

 (有)ちきりや手塚万衛門商店は、寛政年間(1789年~1800年)に創業の約200年の老舗企業です。木曽漆器の伝統技術を受け継ぎながらも、時代に合った新しい感覚を取り入れた製品を開発してきました。1980年代より、全国各種公募展に出品を続け、全国漆器展 通商大臣賞、テーブルウェア大賞展 最優秀賞等数の賞を多数受賞しています。日常の生活で子供からお年寄りまでが心地よく使えるよう、「畢生椀(ひっせいわん)・畢生箸」などの製品ラインナップを揃えています。ガラスや金属等他素材に漆を塗るなど、優れた技能を基盤に新工法にも挑戦しています。
 「漆器は使ってなんぼのもの。だから日々の生活に潤いを与えられるよう、使い手の笑顔を思い浮かべ一つひとつを作っています」手塚社長は、時代に対応するための工夫をこう語られました

人に感動を提供できる製品なら生き残れる

 ロボットなどにより生産能力は飛躍的に向上している現代においては多くのモノがコモディティ化し、安価で取引されてしまう傾向にあります。
 そうした中では、コモディティ化とは対極の「いかに人の手を介しているのか」、「ストーリー性を持つのか」などが価値を持ちます。
 伝統工芸品は、その一つひとつが手作業で作られています。それ故に、ぬくもりや心地良さなどが人の感性を揺さぶります。能作やちきりや手塚万衛門商店の製品に対し「持つ喜び」を語るファンは多くいます。今の顧客ニーズを捉え、感動を与えることができるのなら、顧客はそれに見合う対価を払ってくれるでしょう。
 人工知能により2030年には、日本の職業の約半分が無くなる とのシンクタンクの予想もあります。しかし、単なる工業製品を作る仕事は人工知能やロボットに取って代わられたとしても、「人の技」によって生み出された製品は、多くの人に愛でられ、この先も息づいていくのではないでしょうか。
 まさに、一周遅れのトップランナー「伝統工芸」のこれからに期待したいと思います

 

 

 

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