地方創生下の人口増加町村の取り組み<2017・02・27>

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最終更新日: 2017年2月27日

長野県の平成28年の人口動態は社会減が45人にとどまった

  131日に長野県から公表された「毎月人口異動調査に基づく長野県の平成28年の人口増減」は、前の年に比べ11,389人の減少となりました。長野県の人口減少は、平成21年頃から毎年1万人を超えるようになっています。人口の増減は、生まれる人と亡くなる人の差である自然増減と、長野県に入ってくる人と出ていく人の差である社会増減からなります。平成28年も自然増減では、依然亡くなる人の方が生まれる人数より9,821人多くなっています。ただ平成28年の特徴は県外から県内に来る人が増えたことで、ピーク時には9千人に上った社会減が今回は45人の減少にとどまりました。

人口が増加した県下自治体と取り組み    

  平成28年中に人口を増やした県内自治体は、塩尻市、南牧村、北相木村、軽井沢町、御代田町、原村、南箕輪村、大鹿村、野沢温泉村の9市町村です。この9市町村は、全て社会増となっています。また、南箕輪村では唯一自然増も果たしています。  

   この南箕輪村と、以前本コラムで一度採り上げた人口千人程の大鹿村の取り組みを紹介しましょう。

女性の育児と就労の両立にいち早く取り組んだ南箕輪村 

   南箕輪村は平坦で交通の便が良いことや、県内中堅メーカーの工場が立地し「働く場」に恵まれていることに加え、地道に進めてきた「女性の育児と就労の両立」のための施策が功を奏しています。今回の公表による人口は15,113人と県内の村の中では最も大きくなっています。今では、「子供を育てるなら南箕輪村」と口コミで多くの若い夫婦が移住をするまでになっています。唐木一直村長は17年前の就任当初から「子どもが元気な村、子育て日本一の村」にしていきたいという思いから、子育て施策を優先してきました。具体的には、女性が働きながら子育てできる環境の整備が重要と考え、保育料の引き下げから始め、長時間保育や放課後児童クラブの充実や女性の就労相談室に力を入れてきました。こうした施策の柱として現在、100頁に及ぶ「南箕輪村子ども・子育て支援事業計画」が策定されています。この計画では、子育て世代へのアンケートでニーズを探って改善を進めてきており、結果、現在定住志向が約9割と高くなっています。地元への愛着が深い住民が多い地域でなければ、外部から人が来ることは望むべくもないでしょう。 

「日本で最も美しい村」をモットーに移住者が2割を占める大鹿村  

   東に南アルプス、西に伊那山脈と大自然に抱かれた大鹿村。中央構造線博物館や大鹿歌舞伎でも有名で、伝統を大切に考える住民の地域愛が強い村です。人口は千人ほどですが、美しい自然にあこがれ、移住してきた村民も多く現在では約2割に上ります。今回の調査でも社会増21人のうち13人は県外から来ています。1940年代からで陶芸や切り絵などの芸術家や翻訳家が移住しています。最近も20代や退職後の60代の方が多く、自然農法など農業に取り組んでいます。彼らは耕作放棄地を復活させ、独自に都会などに固定客を持ち、宅急便などを使い農作物の安定的な販売を行っています。大鹿村では、2005年にこの村の素晴らしさを全国にアピールするため、北海道美瑛町(びえいちょう)など7町村と「日本で最も美しい村連合」を設立しました。「ストレートに『観光に来て』と言うのではなく、“日本で最も美しい”と言えば誰しも行ってみたくなる。失われたら取り戻せない日本の農山村の風景を守る。村本来の姿を維持しつつ、自信を持って全国にアピールしていく」と柳島貞康村長は言われます。

   ないものねだりではない、今ある地域資源に誇りと愛着を持って、磨き上げ、しっかりと情報を伝えていくことがこれからの地方創生には欠かせない視点なのだと思います。

 

 

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