ドラマ「逃げ恥」に見る人口減少問題<2017・01・17>
好評だったドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」
昨年は、TBS系(県内ではSBCテレビ)で放映していたドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」(以下、「逃げ恥」)が最後の回に視聴率20%超えと大好評に終わり、話題となりました。あらすじは、新垣結衣さん演ずる森山みくりが職を失い、星野源さん演ずる津崎平匡と契約結婚をして、家事という業務に就くという「主婦業の経済的価値」を考えたドラマとなっています。
このドラマを見ながら、主婦業の大変さと人口減少問題について感じる場面も多かったので、改めて「逃げ恥」について考えてみたいと思います。
女性を認めてくれる男性こそ
このドラマの最終回で、商店街の活性化のための仕事を経験し成果を上げたみくりが「自分の小ざかしさが男性からは嫌われ、職にも就けない原因だった。しかし、商店街活性化のような仕事ではこの小ざかしさが役に立った」と平匡に打ち明ける一場面があります。その時の平匡の答えが「小ざかしいというのはいかにも上から目線である。自分はそのように上から目線でみくりを見たことは一度もないし、そもそも小ざかしいなんで思ったこともない」というものでした。
この言葉に女性みくりの存在は救われ、ようやく自分を認めてくれる人に出会ったと改めて噛みしめながら、平匡を心から伴侶として認めたハッピーエンドの展開となっています。
これら一連の流れは、一般に女性の家事という重労働の経済的な価値を認めずに、男性からは上から目線で扱われ、例えば小ざかしいというような女性特有な長所を社会で活かしきれていないという、女性を巡る社会的状況を示唆しているように見えます。
女性が仕事をし続けられる社会・企業
地方創生では、女性が地方に定着して、結婚をして、子供を産み育てられる環境を作ることを大きな目的としています。その際、最も重要なのが、この女性に対する同じ目線や、女性の長所を生かした働き方の創造、出産・子育てという負担を軽減する社会でしょう。不甲斐ないながらも平匡に多くの女性が共感したのは、女性と同じ目線で寄り添える人物だと、女性から本能的に感じてもらえたからだと思います。家事ひとつとってみても、女性と同じ目線でいなければ、女性に不当に多くの負担がかかることになります。そのような不当な負担はいかがなものかと「逃げ恥」では問うていたのだと思います。
現在、人口減少の大きな原因の一つは、結婚をしない女性が増えたことにあります。女性は、結婚しても不当な負担が目に見えているならそれを躊躇します。そして、出産・子育てと重なれば、家庭や勤め先、社会の協力なくしては、一人では担いきれません。また、結婚で会社を辞めてしまえば、正社員になることは難しく、非正規社員として働いた場合の賃金格差はあまりに大きい。結婚による負担量や経済的な損益を計りにかけ、女性は結婚よりも働き続けることを選んでいるのです。
こうした状況下、結婚する女性を増やすために先ず必要なことは、妊娠・出産・子育てをしながら、正社員として働き続けることのできる企業・社会の仕組みづくり、風土づくりでしょう。仕事と結婚が両立できる日本国にならなくては、人口減少は永遠に止まらないように思います。そして、女性が結婚しても働ける一番のポイントは、夫である男性にあることは言うまでもありません。さらに既婚者である男性諸氏もいつまでも上から目線でいると、人生においては熟年離婚という憂き目に会いかねないでしょう。
「逃げ恥」はそうした人口減少問題への本質的な取り組みを訴えた番組だったように感じた次第です。
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