2017年の展望~緩やかな回復のもと、人的投資を~<2017.01.10>

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最終更新日: 2016年12月10日

横ばいから緩やかな回復へ

 2016年の日本経済は、中国を始め新興国などの景気減速に加え、円高が進んだことから横ばい圏内で推移した。四半期毎の実質GDPを見ると、1-3月期は対前期比0.5%、4-6月期は同0.2%、7-9月期は同0.5%となっている。なお、11月の米国大統領選後は円安基調に転じている。

 2017年の日本経済は、円安基調から輸出下押しの影響も和らいでくるため、生産の増加、企業収益の改善を通じた設備投資の持ち直しが期待される。また、経済対策による公共投資の増加などの下支えもあり、横ばい圏内から緩やかな回復に向かうものと予想される。ただ、物価上昇などによる実質賃金の伸び悩みから個人消費は鈍い動きにとどまる見通し。海外動向では、米国次期政権による政策運営や英国のEU離脱問題、欧州各国での大型国政選挙の行方など不透明要素も多く、想定外の事態が発生した場合には経済の下振れも懸念される。

緩やかな回復が見込まれる長野県経済

 円安基調の中、長野県経済も緩やかな回復が見込まれる。生産が増加する中、設備投資が底堅く推移する見通しである。また、観光面でも前年の大河ドラマ効果の反動減はあるものの、外国人観光客の増加や、夏の「信州デスティネーションキャンペーン(DC)」の盛り上がりに期待が持たれる。ただし、個人消費は所得環境の改善の遅れから、全国同様、力強さに欠ける動きとなろう。

主要17業種の天気図はおおむね横這い、3業種で改善方向の見通し

 2017年の長野県主要17業種を展望すると、天気図ではおおむね横ばいながらも製造業で3業種が改善方向となっている。中国の半導体増産に伴う需要が見込まれる「半導体製造装置」、大型プロジェクターや自動車向けの新製品需要増加が予想される「光学・計器」、安定した自動車関連需要が続く「電子部品・デバイス」である。さらに円安が進行すれば、製造業の業績の上振れも期待できる。外国人旅行者の増加、さらに信州DCの効果などから「ホテル・旅館」も順調に推移するだろう。また、横這いながらも、「民間工事」では福祉業界などの建設投資に加え、低いローン金利や国の補助金制度の活用から住宅関連需要が見込まれる。一方、円安による資材・燃料価格の上昇は、「飲料製造」、「食料品製造」、「旅客」、「貨物」などの収益環境を悪化させることが懸念される。「公共工事」も経済対策により国の事業は増加するが、県内事業者の受注増加につながるかどうかは不透明である。

人材育成など人的投資で確実な成長を

 日本経済は、個人消費を主とした国内需要の弱さから、外需動向に左右されやすくなっている。特に急激な為替変動は「設備投資」を冷え込ませる。こうした環境下であればこそ、人材育成など「人的投資」に注力すべきだろう。リーマンショック時に、仕事の急減から空いた時間で社員のスキルアップを図り、今成果を上げている企業は少なくない。当時に比べれば、新年はリスク含みとは言え条件的には恵まれている。2019年の消費増税を乗り越え、2020年の東京五輪後にも確実に成長を遂げられるよう、人的基盤の強化に向けた一年としたい。

 

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