価値ある時間の使い方とは<2016.10.07>

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最終更新日: 2016年10月8日

 最近は企業の人材不足ということを良く耳にします。長野経済研究所が8月に県内製造業を対象に実施したアンケート調査で、「人材の過剰・不足」を尋ねた項目では、3割の企業が不足との回答となっています。ここ数年の景気回復で仕事が増えた結果、人材の不足が露わになったものと思われます。このような中では、新たに外から人を採用していくことは難しいことです。社内にいる人材を育成していくことで生き残っていくしかありません。

  企業自身もこうした状況に対する危機感には強いものがあります。「現在の各社の主要な課題」について尋ねると、7割の企業が人材育成を挙げています。ところが、同じアンケートで「最近取り組んだ主な施策」を尋ねると、「社内教育の充実」など人材育成に関する取り組みは2割程度と低くなっています。つまり、必要だが、できていないということです。この差はなんなのでしょうか。

  アメリカ第34代大統領のアイゼンハワーが考案した「アイゼンハワー・マトリックス」という考えで整理してみたいと思います。これは、仕事をする上での時間管理ツールで、仕事を「重要かそうでないか」と、「緊急かそうでないか」を掛け合わせた4つの領域で考えるものです。つまり4つというのは、「1.重要で緊急」、「2.重要だが緊急でない」、「3. 重要でないが緊急」、「4.重要でなく緊急でもない」、となります。

  例えば、「1.重要で緊急」は、締め切り間近の仕事やクレーム処理、「2.重要だが緊急でない」のは、学習や自己啓発、健康維持など計画的に行うもの、「3.重要でないが緊急なもの」は、無駄な電話や形ばかりの会議、「4. 重要でなく緊急でもないもの」は、意味のない仕事や活動、暇つぶしなどです。こうしてみると、当然に、「1.重要で緊急なもの」には直ぐに取り掛からなくてはなりませんが、「2.重要だが緊急でないもの」は、置き忘れたまま過ごしてしまうことが多いことに気付きます。

  冒頭の「人材育成」に関する認識と取り組みの差は、正にこれに該当すると思います。取り組むべき仕事なのですが、計画的に考えないとできないということになります。先日、ノーベル賞を受賞された大隅良典・東京工業大学栄誉教授が、長年地道に取り組まれた仕事などもこの代表的な事例でしょう。

  ほかにも企業の仕事には多くのものがあります。それぞれの仕事がこの4つのどこに該当するのか考え、限られた8時間という労働時間を有益に使っていくことが生産性を上げるのに必要です。そして、人材育成のように「重要だが時間のかかること」をないがしろにしたら、将来は開けてこないのだと思います。各個人の人生においても、しっかりと考えるべき視点だと思います。

 

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