県内のメディカル産業振興の動き<2016.3.16>

  

 近年、県内製造業による健康・医療分野への積極的な取り組みが進んでいます。長野経済研究所が2015年6月に行った県内企業へのアンケートでは、製造業企業が過去5年間に進出した新規事業分野として、自動車等交通分野、環境・省エネルギー分野に次いで医療分野は3番目でした。また、県による2015年度の工業技術動向調査でも、5年後に展開したい技術分野として健康・医療が最も増加しています。

 高い専門性や業界の特異性などから、この分野で必要な情報や経営資源を中小企業が単独で満たすことは容易ではありません。そのため、参入に向けた様々な支援策が整備されてきています。県も支援策を実施しています。先月5カ年の計画を終了した「地域イノベーション戦略支援プログラム」もその一つです。プログラムに外部事業評価委員として参加してきたことから、その内容や成果をご案内します。

 この事業は、文部科学省の補助金を得て、県、県経営者協会、信州大学、県テクノ財団、八十二銀行など、県内の「産学官金」の連携により実施されました。県産業の強みである超精密微細技術を応用し、医療現場のニーズに基づく製品開発を促す仕組みを構築し、県に国際競争力を持つメディカル産業分野を作ることを目的としたものです。

 事業では4本の基本戦略を実施してきました。一つは、開発研究者の集積とメディカル機器開発。二つは、「医工連携」を推進できる企業技術者や大学研究者の育成。三つは、信州大学の研究設備・機器などの地域企業への開放と活用支援。そして、四つが、メディカル機器開発・販路開拓支援のためのネットワーク作りです。

 成果としては、100人余の研究者・技術者が集まり、毎年250~280程度の企業が参画しながら50件のメディカル機器が製品化されたこと。そして、メディカル機器の開発・販路開拓支援の仕組みとして、県内製造業者と県内外の大学など研究機関や医療従事者、医療機器メーカーなどで「知のネットワーク」を構築できました。大学の持つ研究成果を利活用して付加価値のある製品を作る。そして、大学医学部や付属病院の中から現場ニーズを発掘し、その解決のため産学官金が連携して製品開発を行う仕組みができました。

 今後も県テクノ財団を窓口に、情報提供、製品開発・販路開拓支援は継続されます。複雑化・高度化する医療・介護現場の課題解決に向け、新たな事業展開を志す企業にとって、このネットワークは、良き指南役でありパートナーになっていくでしょう。

 変革の時代、外部資源とネットワークを最大限に活用することが、中小企業生き残りのカギでしょう。

 

(初出)朝日新聞平成28316日朝刊「けいざい応援通信」『医療産業振興へ支援網』

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