善光寺御開帳の年を振り返る<2015.12.16>

  今年は6年(数えで7年)に1度の善光寺御開帳があり、にぎやかな一年だったように思います。善光寺御開帳の年を振り返ってみたいと思います。
 日本経済から振り返りますと、設備投資が景気をリードしましたが、昨年4月の消費増税の影響から個人消費は慎重な姿勢が続きました。また、後半は中国経済の低迷から景気は下押しされ、持ち直しの動きに一服感がみられています。公表されている四半期のGDP統計でも、1~3月期はプラス1.1%の成長でしたが、4~6月期にはマイナス0.1%と落ち込み、7~9月期は再び0.3%と成長はわずかです。ただ、緩やかな回復基調が途絶えたわけではなく、年間を通じてはプラス成長が予測されています。
 こうした緩やかな回復にある年に今回の善光寺御開帳は開催されました。前回が2009年とリーマン・ショック後の景気のボトム期にあっただけに、今回は、参拝者や消費の増加が期待されました。また、北陸新幹線の金沢延伸も御開帳直前の開通となったため、大きな期待が寄せられました。
 結果は、参拝客が前回を34万人上回る過去最高の707万人となり、経済波及効果も前回を152億8千万円上回る1,137億3千万円となりました。そして、新潟・北陸からの参拝者も全体の11.9%と前回を2.9%上回り、新幹線延伸が参拝者を増やしたことが分かります。
 参拝者が増えれば、経済効果も増えますが、今回は、参拝者一人当たりの消費額も上がっています。日帰り客については5,929円と前回より1,061円、宿泊客についても2万5,501円と前回より1838円増加しています。
 このように景気回復や北陸新幹線の金沢延伸という追い風があった今回の御開帳ですが、経済効果の増大の最も大きな要因は、この追い風を受ける「帆」をしっかりと用意したという点が見逃せません。
 今回の御開帳では、官民で組織された実行委員会(ウェルカム長野2015実行委員会)が北陸や首都圏を中心に全国へのプロモーションを行った他、「日本一の門前町大縁日」と銘打ってイベントを企画・開催しました。大縁日では、期間中に「おもてなし」や「街のにぎわい」などの魅力を創出し、参拝者の街歩きを促しました。
 こうした取り組みが功を奏して、一連のイベントには市民など総勢1.5万人が参加しました。善光寺と長野駅の中間に設置したイベント会場には約58万人が来場し、消費盛り上げに一役買ったものと思われます。
 「チャンスの女神には前髪しかない」という言葉があります。チャンスは通り過ぎた後を追いかけても、後ろ髪がないので捕まえることはできないという意味です。
 2016年も引き続き景気は回復基調をたどる見通しです。しっかりとチャンスを手にできるよう、常に準備や努力を怠らないで臨んでいきたいものです。
(参考)長野経済研究所「経済月報2015.8」『人出も経済効果も過去最高となった善光寺御開帳』

(初出)平成27年12月16日朝日新聞朝刊「けいざい応援通信」『御開帳の追い風かっちり』

 

関連リンク

このページに関するお問い合わせ

産業調査

電話番号:026-224-0501

FAX番号:026-224-6233