地方創生は『自助、共助、公助』の精神で<2015.09.02>
先月、神城断層地震からの復旧も進み、日常を取り戻しつつある小谷村を訪ねました。松本久志村長に震災時の対応や、過疎の村の地方創生について話をうかがいました。
もともと小谷村は地滑りや土石流災害が多い村です。最近では1995年に豪雨による土石流災害に見舞われています。今回の震災では、過去の災害の経験を生かすことで避難所暮らしやその後の復旧がスムーズに進みました。また、村の消防団の活躍も大きかったようです。
現在271人の村民が消防団に入っており、災害が多い村のセーフティーネットとして機能しています。災害は地域のあり方が根本的に問われる一種のリトマス紙だと考えられます。震災の被害が最小限に収まったのは、小谷村の防災の仕組みが整っていたからだと言えます。
松本村長は「被災経験を生かし、救助活動ができる人材が多く、消防団が厚く組織され、不足する部分を役場が担うという役割分担がうまく機能した」と言い、地方自治における「自助、共助、公助」の重要性を説かれます。
また、震災は過疎の村の10年後をいやが応でも考えざるを得ない契機ともなりました。被災により家屋が倒壊し、元の集落に帰れなくなった住民もいました。二つの集落が消滅の危機に瀕しています。小谷村は小さな集落が点在し、放っておけば消滅してしまう所が少なくありません。今後わが集落は消滅してもいいのか、存続あるいは統合を目指すのか。今から考え、手を打たないことには村の10年後はないという現実を突き付けられたのです。
将来像についてはそれぞれの集落の主体性を尊重しながら、村では震災を契機に地方創生に向けた取り組みを活発化させています。移住者を増やすためには、働く場が必要となります。村はスキーを中心とした観光業を主要産業としています。これを強化することで働く場を増やし、稼ぐ力を高めようとしています。
松本村長は、インバウンドの増加を受け、国際観光リゾート地を目指す方針を掲げています。また、「観光地の差別化要因は人材だ。人づくりを徹底して支援する。その一環として子供たちの英語教育にも力を入れていきたい」と小谷村創生の柱をこう語ります。
観光以外の新たな産業興しにも挑戦しています。総務省が行う地方の人口減対策として始めた「地域おこし協力隊」の積極活用です。現在新たな仕事づくりをミッションに、11人の隊員を県外から迎え入れています。外部人材の登用で、地域おこしの機運も大きなうねりとなっています。
「住民がやりたいという事業は積極的に支援していきたい。ただし、主人公はあくまでも住民だ」と松本村長。地方創生も「自助、共助、公助」が基本になるべきだと強調しました。
長い歴史の中で幾多の災害を乗り越えてきた小谷村だからこそ持つ「自助、共助、公助」の精神が、消滅自治体と目された村を「持続可能な村」へと変貌させていくのだと思います。
(初出)平成27年9月2日朝日新聞朝刊「けいざい応援通信」『自助・共助・公助で挑む村』
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