次代見据え挑む新規事業<2015.08.05>

 最近の経済情勢について当研究所では、「一部で弱さもみられるが、回復に向けた動きが続いている」と判断しています。この回復に向けた動きを力強いものとするのが成長戦略です。政府では、6月末に成長戦略を実現するための「日本再興戦略」改訂2015を閣議決定しました。そこでは、「デフレ脱却が視野に入ってきた現在、新たな産業を作り出すための企業の将来投資が必要な段階にきている」との認識が示されています。現状は、20年後、30年後の成長を見据えた企業の攻めの経営が求められている時期と言えましょう。こうした環境下、長野県企業の動向はどうでしょうか。
 当研究所では6月に「長野県内企業の経営課題と今後の事業戦略に関するアンケート調査」を実施しました。県内企業2,000社を対象にアンケート調査を実施して、約600社から回答をいただき、そこで県内企業の今後の新たな産業作りとも言える「新規事業展開への取り組み」をお聞きしました。
 先ず、「そもそも長野県企業にとって、新たな産業を必要とするだけ現状は疲弊しているのだろうか」という問題意識から、県内企業の成長ステージの認識を尋ねてみました。
 事業や製品には成長ステージがあり、導入期から成長期を経て、成熟期、衰退期となっていきます。成熟・衰退期となれば次の手を打たなくてはなりません。
 結果は、成熟・衰退期の企業が全体の6割と停滞感を伺わせるものとなりました。つまり、新たな種を蒔いていかないことには、長野県産業は先細りになっていくということを暗示しています。
 そこで、新規事業への挑戦が求められるのですが、その回答を見ますと約4割の企業が新規事業展開を実施しています。手掛けてきた分野では、製造業では、新興国との競合が激化している電気・電子分野から、世界的な需要拡大が期待される交通や環境、医療分野への進出が伺えます。一方、非製造業でも、環境分野のほか、健康、介護サービスなど新たな国内需要を捉えようとする動きを見て取ることができます。成熟、衰退との認識が多い中、県内企業においても次代を見据えた産業への転換が緒に就き始めたと考えられましょう。
 アンケートでは、新規事業展開をするにあたっての必要な手立てについても聞いています。多かった回答は「自社の技術・ノウハウの活用」「外部機関との連携」となっています。人・モノ・金が不足する中小企業にとって、自社の強みを活かせる分野をターゲットに、不足する資源は外部を使っての事業展開が堅実な方法でしょう。
 地道な積み重ねではありますが、一社一社の強みを活かしての事業展開こそが今後の長野県経済の真の回復を実現していくものと思われます。


(初出)平成27年8月5日朝日新聞朝刊「けいざい応援通信」『次代見据え挑む新規事業』

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