ファンと歩み、ファンを作り続ける<2015.07.07>

 毎月、SBC信越放送にて、県内の製造業の技術力や経営力を紹介する番組「明日を造れ!ものづくりナガノ」に出演しています。既に放送も80回を超え、70名近い社長に経営のご苦労や各社の強みをうかがってきました。
 多くの社長から聞かれたのが、お客様のニーズに合った商品をいかに提供していくのかということです。先月(6月28日)ゲストにお招きしたアトリエ・ド・フロマージュの会長松岡容子さんのお話を紹介したいと思います。

 同社は、33年前に松岡会長がご主人とともに東御市で興した会社です。チーズやチーズで作ったケーキやピザの製造・販売を行っており、軽井沢、東京、名古屋にも店舗を持ち、全国に多くのファンがいます。今年6月のフランスの西部の町トゥールでのチーズと乳製品の見本市、「モンデュアル・デュ・フロマージュ」でスーパーゴールド賞を受賞しました。長野県の味が世界で認められたのだと言えましょう。
 もともと松岡夫妻は、大学卒業後、大手出版社に勤める普通のサラリーマンでした。しかし、故郷へ帰って働きたいという思いから、東御市で起業をしたものです。松岡会長がチーズに興味があったことと、東御市の気候がチーズ作りに向いており、新鮮な生乳を供給する酪農農家も多くあったことなども決断を後押ししました。夫妻で国内の大学で食品化学を学び直した後、本場フランスの国立乳製品専門学校に留学し、チーズ製造技術を学んだそうです。

 生チーズ製造の取り組みは、全国に先駆けてのものでした。以来、「豊かなチーズワールド」をコンセプトに様々なチーズ作りに励んでいます。そして現在、同社では、50種類を超えるチーズのほか、チーズを素材としたチーズケーキやピザなど多彩な製品を揃えています。
 実は、20数年前まではチーズ製造だけで、夏のお客様が多い時期やお歳暮の時期には大量に売れるのですが、そこで在庫が尽きてしまう状態でした。そこで、いつでもお客様に商品を提供できるようにチーズを使用したソフトクリームやチーズケーキ、ピザなどの加工品を開発しました。また、カフェで手作りケーキを出し始めたらテイクアウトのニーズが多かったため、菓子製造業の許可を取り販売を始めました。お客様の声に沿ってやってきたら、結果として商品の種類が豊富になったようです。

 松岡会長も自社の強みとして、「当社は設立当初からお客様との距離が近く、感度の高いお客が商品の方向性を教えてくれることが自社の強みとなっている。」と言います。「自分自身今でも店頭に出てはお客様の声をよく聞いているし、それぞれの現場でのお客様の声が、社員やパートスタッフを通じて私など経営者に届く仕組みができている。」さらに、「経営者と社員がよりより良い味を求めて、常に新しいものへチャレンジする社風が根付いている。他にないものを作るという考えを基本に持ち、商品を開発している。その独自の商品が高い評価を得ている。」と話されています。

 飽食の時代と言われて久しい訳ですが、一方でおいしいものは多少高くても売れています。また、世の中に溢れている昔からあるようなものは見向きもされませんが、世の中にない新しいモノ、価値あるモノは売れます。同社の場合、常にお客様の声に耳を傾け、他にない独自の製品づくりに挑戦し続けることで、ファンを作り続けています。
 厳しい時代ですが、新しいことに挑戦し、ファンと歩み、ファン作りを続ける企業は強いということを改めて学ばせていただきました。

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