力強い景気浮揚のかぎは<2015.05.13>

 最近の経済は消費増税の影響も薄らぎ、海外経済の好調さや円安により輸出も持ち直しています。こうした中、長野県経済は今、どのような状況と言えるのでしょうか。長野経済研究所が県内企業を対象に実施している「業況アンケート調査」から、最近の経済情勢を考えてみたいと思います。
 まず、現状の認識としては、長野県経済は、昨年4月の消費増税後に悪化したのち、輸出や設備投資などに牽引される形で「緩やかに改善している」というものです。経済対策としての公共工事の底堅い需要に加え、原油価格下落の恩恵を受ける企業も増加しており、経済を下支えしています。
 「業況アンケート調査」で、ここ1年を振り返るなら、山あり谷ありといった状況を経てきたことが分かります。本調査は、四半期毎に県内企業約700社に対してその時の業況感を尋ね、「良い」と答えた企業割合と「悪い」と答えた企業割合の差を指数で示し、その変化で経済の動向をとらえています。これによると、消費増税直前の2014年1‐3月期には駆け込み需要のため+10.4と良好でしたが、増税のあった4‐6月期には駆け込み需要の反動などから△16.1と大きく落ち込みます。その後7‐9月期は△9.5、2015年1‐3月には△7.0と改善していますが、その足取りは緩慢なものにとどまっています。
 改善が緩慢である理由を考えてみるなら、当地の経済構造の一端が見えてきます。最近の経済を左右してきたものとしては、消費増税と円安の影響が大きいでしょう。消費税が上がるということはモノの値段が上がることと同じですから、増税前には駆け込み需要が発生し、増税後にはその反動として駆け込み分の消費は減少します。また、増税に沿って所得が上がる訳ではありませんから、その分もしばらくは減少することになります。長野県など地方の場合、所得の回復が都市部に比べ遅れているという状況もあり、消費の回復ははかばかしくありません。
 そして、円安は、輸出の増加を通じて製造業の業績を改善させています。これが改善のエンジンとなっていることは間違いないのですが、長野県経済では、円安による輸入資材の値上がりなどから、逆に収益を悪化させている企業も少なくありません。円安がアクセルと同時にブレーキになって、改善の動きを限定的にしているものと思われます。
 このように考えてきますと、現状の緩やかな改善を力強いものにしていくためには、所得の増加が欠かせないことが分かります。現状では原油安という追い風も吹いています。円安のデメリットが原油安で軽減されている今をチャンスと捉え、企業が業績を回復させ、それが所得に反映されていくことが強く望まれます。

(初出)平成27年5月13日朝日新聞朝刊「けいざい応援通信」

 

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