子どもの郷土愛育みたい<2015.02.04>

 地域活性化の現場を知るために、県内の町村長を定期的に訪問しています。このコーナーでも元気な町村の取り組みを時々お伝えできればと思います。
 先月は宮田村に行き、小田切康彦村長にお会いしました。宮田村は成人式に学校給食を出すなど、ユニークな取り組みで知られます。村内には学校給食用の畑があり、給食の食材の6割を地元産でまかなっています。
 この取り組みは2004年に「宮田村学校給食を育てる会」の発足とともに本格化したものです。当時は学校給食に使われる村内産の農産物がほとんどなく、それを疑問に思った有志が立ち上げたものです。学校給食に地元の食材が使われることは、子どもたちの郷土愛を育み、地域のつながりを築き、地域農業の振興にもつながります。
 もともと同村には「宮田方式」と呼ばれる、耕作できなくなった農地を集約管理する仕組みがあり、村内の耕作放棄地はわずか1%にとどまっています。その伝統が、地産の食材をふんだんに学校給食に供給できる構造を作り出しているのだと言えましょう。
 成人式での学校給食の取り組みについて、小田切村長は「晴れの成人式で地元産の農産物を使った美味しい給食を食べ、故郷の良さを再認識して欲しい」「村に帰ってきてくれるきっかけになれば」と、思いを語ってくれました。
 現在、県内のどの自治体でも、人口増対策が熱心に行われています。そのため、都会からの移住・定住促進などにも力を入れているのですが、最も重要なことは巣立った子どもたちが戻ってくることに他ありません。子どもたちが戻らない中での移住・定住促進は、ザルで水を汲む類のものでしょう。
 小田切村長の考える子育て支援も目的は一点、全て子どもたちのUターンに向けているとのことでした。そのためには、食育が基本であり、美味しい故郷を維持していかなくてはならない。
 さらに、住んでいる人々に思いやりの心が根付いていることが、帰りたい故郷につながる。そのためには教育目標として、ふるさとを思う心、思いやりの心を育むことこそが最も大切になる。それは、友だちや父母、祖父母を大切にする心を育むことでもある。
 理念の支柱として大切にされている宮田村出身の思想家唐木順三が、ふるさとの子どもたちのために贈ったという一遍の詩を紹介いただきました。
 「山と語り流に思ひ、風に聞き雲と遊ぶ、うるはしき心のしらべ、あめつちとともに」
 子どもたちにどれだけ故郷の良さを伝えられるのか。人口減少時代の地方自治体の大きなテーマなのだと思います。

(初出)平成27年2月4日朝日新聞朝刊「けいざい応援通信」

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