中小に地域経済の可能性<2014.12.10>

 今回は、11月28日に行われた「一日中小企業庁in信州」から報告をします。このイベントは長野県と中小企業庁、関東経済産業局の主催で、地方の中小企業が国の施策を知り、今後の中小企業施策をより良いものにしていくことを目的に開催されました。
 その一環として中小企業者を囲んでのフォーラムがあり、私がコーディネーターを務めました。テーマは「信州の中小企業の伝統と創造」。自社の強みを活かし、いかに新たな一歩を踏み出したのかを語ってもらいました。パネリストは坂城町の西澤電機計器製作所社長の西澤孝枝さん、上田市のシステムプラン会長関野友憲さん、飯田市の多摩川精機副会長萩本範文さん、木祖村の湯川酒造店社長湯川尚子さんの4人です。
 萩本さんは「そもそも地域経済の窮乏を救済することが自社の経営理念であり、一貫して守ってきた企業哲学だ」と言います。「地域を守ることを最優先の経営課題とすると、開発力の強化が最も重要な政策となる。結果、新しい製品・事業を生み出すことにつながった」と、ハイブリッド車の主要部品「シングルシン」で圧倒的なシェアを持つことになった、その秘訣を語ってくれました。
 この開発力は、自社の努力もさることながら、地域の様々な機関との「連携」で高めることができます。西澤さんは「第2の創業」と位置付ける医療・福祉分野への進出を「自社が開発した肢体不自由者用自動ページめくり器は、信州大学や行政との連携のたまものだ」と連携の重要性を訴えます。
 「地元木曽の水と県産米を使った日本酒に特化することで、全日空の国際線での採用につながり、地域の皆さんに喜んでもらうことができた」と話すのは湯川さんです。地域の産品を使いながら、変化するニーズに沿った製品の開発こそが世界の扉を開けることを語りました。
 国は現在「地方創生」を掲げていますが、関野さんは「中小企業こそ産業を発展させる原動力で、地域社会を担う重要な存在である」「そうであるなら、地域や地域のお客様のニーズに沿った事業で役に立つことが大切だ」と強調していました。
 日本経済が低迷した原因は、新興国の台頭や長すぎた円高も一因でしょうが、本質的には、変化するニーズへの対応が遅れたことにあるのではないでしょうか。「挫折や失敗をチャンスと捉え、新たな事業への挑戦こそ重要」と話す4社の皆さんに、復活する長野県経済の可能性を見せていただいたフォーラムでした。

(初出)平成26年12月10日朝日新聞朝刊「けいざい応援通信」

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