北部大地震から3年半、栄村 島田茂樹村長にうかがう<2014.12.04>

栄村 島田茂樹村長を訪問する

 長野経済研究所では機関誌「経済月報」を毎月発行しているが、その中で県内町村長に、それぞれの町や村の元気な地域づくりについてうかがう「わが町・わが村を語る」を連載している。
 9月には、長野県北部地震から3年半となり、復旧(ふっきゅう)を終え、現在、復興(ふっこう)へと舵を切る栄村の島田茂樹村長を訪問した。

震災の状況と復旧を振り返る

 2011年の北部地震では、秋山郷を除いて約9割、村内のほとんどが被災し、住宅は33棟全壊。農地、農道、道路、水道など全部含めて被害額は約170億円と甚大であった。しかし、全国から1万4,000件弱、10億余(13年2月時点)の義援金や、赤十字関係の1億4,300万円の寄付、村への2億4,000万円の直接寄付と多くの支援が寄せられ、村民の協力のもと、全て復旧は終えた。
 住宅復旧については、集落のコミュニティ維持に重点を置き、全壊と半壊の家を含めて村も負担し、126棟の住宅を取り壊した。高齢の住民が多いことから、住んでいた所へ帰りたいとの希望を汲んで、そのうち31戸の村営住宅をもといた集落に再び住めるように8か所に分散して建て直した。

栄村の強み、行政と住民が力を合わせての独自事業

 「田直し」や「道直し」に象徴されるように、行政と住民とが力を合わせて独自の事業をすすめているのが栄村の強みである。「田直し」は1988年から。非常に狭い棚田など、補助基準に満たない小さな田を整理・拡大する事業だ。費用は基本的に機械のリース代と材料費だけで、その半分を村が補助する。低コストで迅速にすすめるため、設計書は作成せず、重機オペレータと村担当者と農家が現場で直接施工方法を決定している。
 「道直し」は93年から。これも国の補助を受けられない村道や農道を改良する事業。栄村は年平均3mの積雪となる。そのため、小型の除雪車がどこの家にも入れることが必要だ。田直しと同様、設計図を作成せず、村が臨時職員を雇って作業を行い、コストを抑えて実施してきた。

復興に向けた挑戦が始まる

 過疎と豪雪と高齢化の中、こうした智恵を出してきたからこそ栄村は苦難を乗り越えられた。復興に向けてもいくつかの挑戦が始まっている。
 栄村といえばコシヒカリ、美味い米がとれる地として有名だ。栄村産コシヒカリは「心づかい」と名付けて販売。他にも独自のブランドで販売している米もある。震災の影響で、未だ作付けできない水田もあるが、そこではそば栽培をしている。名付けて「福幸(ふっこう)そば」。ブランド化を狙う。
 栄村は水資源も豊富だ。2010年には「信州の名水・秘水」15選に選ばれた湧水がある。それを利用してのワサビ作りの挑戦も始まっている。さらに10年暮れから小水力発電へも取り組んでいる。秋山郷・栃川で東電の水路式発電所が運転。また去年の秋、秋山郷の小赤沢地区に湧水を利用した小水力発電システムも設置した。
 観光では、隣の新潟県の津南町と苗場山麓でのジオパークの認定を目指している。当村は、十日町市・津南町と「奥信越観光協議会」、新潟県6市町と「雪国観光圏」、飯山市などとの北信濃エリアの「信越自然郷」と、さまざまな広域連携体に所属している。北陸新幹線開業後の飯山からの誘客を図りたい。

 北陸新幹線の開業後は、「頑張る栄村」へ是非立ち寄っていただきたい。

(参考)『わが町・わが村を語る“栄村”』「経済月報」(2014年10月号)

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