地域経済活性化に期待される小水力発電の役割<2014.12.3>
外なるグローバル化と内なる人口減少・高齢化で衰退する地域経済
グローバル化の進展の中、地域の担ってきた製造業の基盤が脆弱化している。縮小する製造業を補完する産業が育たない中でのその弱体化は、地域の所得を減少させる。このことは商業、サービス業など内需産業を衰退させ、地域産業全体を低迷させることにつながっている。地域から職が失われることで、若者のU・Iターンの受け皿は乏しくなり、人口減少・高齢化にも拍車をかけている。
地域が成長するためには、地域外からお金を稼いで、その稼いだお金が地域内で投資・消費されること、循環することが必要となる。このお金を稼ぐ産業が、製造業、農業、観光業などなのだが、入り口部分が急速に細くなっている。加えて、地域で消費されるべき部分も、主要な担い手は域外の企業が存在感を高めており、循環せずに漏れる部分が大きくなっている。地域経済は、ザルで水を汲むような効率の悪い構造となっている。
そのため、地域経済を成長させるには、製造業、農業、観光業などを再び強く、太くするとともに、地域内での投資・消費を増やし、自給率を高め、地域内でお金が循環する構造に再構築することが求められている。
期待される小水力発電事業
このような基本的な考え方に立つなら、地域で再生エネルギー産業を創造することの意味は大きい。ひとつは、地域で使用する多量なエネルギーの自給率を高めることができる点である。そして、もうひとつが、再生エネルギー産業が興ることに伴う産業の活性化と雇用の創出である。
その際、地域での再生エネルギー事業は、それぞれの地域の自然資源に左右される。長野県の場合、急峻な山とそこを流れる豊富な水資源、また農業用水路が多いことから小水力発電の潜在力はとりわけ高い。環境省の「2010年度再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査報告書」によれば、長野県の小水力によるエネルギーの潜在力は、地点数で全国2位、設備容量で全国7位となっている。
つまり、幾つかの再生エネルギーの中でも、長野県の場合、小水力発電の優位性が高いものと考えられる。地域毎に自治体など行政が水利権などの壁を低くし、事業をしやすい環境を整備した上で、地域の事業者が主体としてチャレンジすることが好ましい。
さらには、この小水力発電機も地域の製造業者が担い、部品製造から組み立てまで一貫生産し、地域の建設業が施工し、メンテナンスすることなどにより、新たな産業プラットフォームが構築されることも期待できよう。
地域産業人の責務としての新たな産業の構想
理念的に再生エネルギーを基軸とした地域振興のストーリーを描いた。現実には、幾つかの壁が存在し、事業化はそうたやすいものではないだろう。
しかし、働く場がないばかりに故郷に戻らない若者や、その中でさらに衰退する地域と真剣に向き合うのなら、時代に対応した新たな産業を構想することが地域の産業人の責務であるように思う。
(初出)「第5回全国小水力発電サミットin長野 資料集」(2014.11.21)
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