最近の経済情勢と円安の長野県経済への影響を考える<2014.08.04>

消費増税を乗り越え回復途上にある長野県経済

 当研究所では、3か月毎に県内企業およそ700社にアンケート調査を実施している。今回も7月に、4-6月期の景気の現状と7-9月期の景気を予測する「四半期業況アンケート調査」を実施した。(詳しくは同HPにもリリースしているのでご覧いただきたい)
 まず調査結果の特徴から見ると、今期(4-6月期)は消費増税の影響で、全般的に数値は悪化したが、大きく崩れはしなかった。
 製造業の業況感は6期ぶりの悪化となったが、海外向け需要を中心に基調的には底堅く推移した。非製造業でも、百貨店や自動車販売などで駆け込み需要の反動減がみられたが、公共工事が増加した建設業や、設備投資の持ち直しに伴い受注が増加した機械器具卸が下支えした。
 翌期の7-9月期の見通しでは、製造業・非製造業ともに消費増税の影響は和らぎ、企業マインドは緩やかに改善する見通しである。

 製造業では、底堅い海外需要や新製品向け需要への対応に加え、国内でも設備投資の増加に伴う関連産業への波及も期待される。また非製造業も建設業の安定した受注に加え、消費マインドも改善に向かうものとみられる。
 総じて、長野県経済は日本経済同様に消費増税の影響をなんとか乗り越え、再び回復に向かう途上にあるものと考えられる。

円安への転換の影響が大きかったが、県内産業全般へはマイナス影響が大か?

 こうした回復基調への転換の端緒は、昨年来の金融の量的緩和に伴う、行き過ぎた円高から「円安への転換」によるところが大きい。そして、それに伴う株高や、それを受けての個人消費の増加や公共事業の増加などが挙げられる。
 これだけの貢献があった円安だが、現状、県内企業に与えている影響はいかほどだろうか。
円安への転換は、輸出型製造業の収益を改善し、受注量も増加させた。そのため、製造業の約3割はプラスの影響があったと回答している。
 しかし、非製造業では、プラスの影響があったとする企業は8%程度と1割に満たない。さらに、マイナスの影響があったとする企業割合は、製造業・非製造業ともに3割と高くなっている。
 即ち、比較的規模の大きい輸出型製造業の3割が全体をけん引して、全国の景気回復機運とも併せて、長野県内の景気を持ち直しへと戻してきたこの1年半だった。しかし、それとは裏腹に円安による、輸入資材の値上がりや、特にガソリン価格の値上がりなどが企業業績に大きなマイナス影響を及ぼしているものと考えられる。

今後の為替動向と長野県経済は

 このような情勢下、足元の為替の動きをみると、従来100円~102円程度で安定していた円ドル水準が1ドル103円と円安の方向に振れてきている。背景をみると、米国の4-6月のGDPや雇用統計が好調で、景気が力強く回復していることがわかる。それに併せて米国の金融緩和の縮小政策が、その逆を行く日本の金融緩和政策との関係の中で、一段のドル高と円安の背中を押しているようだ。
 先の県内企業の円安から受ける影響から考えるに、現状以上の円安となれば、プラスよりマイナスの影響が及ぶ企業が多くなることが懸念される。
 待ちに待った円安から1年半、行き過ぎた円高同様、現状以上の円安が景気回復のブレーキ要因ともなりかねない構造が見えてきている。

(2014.08.05)

関連リンク

このページに関するお問い合わせ

産業調査

電話番号:026-224-0501

FAX番号:026-224-6233