2014年の長野県産業を展望する<2014.01.10>

改善した2013年の日本経済と回復の遅れた長野県経済

 昨年は安倍政権による経済対策「アベノミクス」もあり、行き過ぎた円高が修正され、輸出企業の業績の急回復を中心に、財政出動や消費増税の駆け込み需要により建設業の業績も改善するなど、年頭に予想された水準を大きく上回る回復ぶりを見せた一年であった。
 しかし、長野県では、その恩恵は一部の業種にとどまり、逆に円安による原料・エネルギー価格の上昇でコストが上がってしまったなど負の側面が強く現れた産業も少なくなかった。製造業でも円安になっても、下請企業への受注増は限定的にとどまった。そのためモノを動かす貨物関連では、モノが動き出す前に円安による燃料価格の高騰に見舞われ、苦戦を強いられた。また、長野県に多い食料品製造業でも、エネルギーや原料の多くを輸入に頼っていることから、コスト増加のため利益が下押しされた。

長野県への景気回復の波及が予想される2014年

 政府の今年の経済見通しでは強気な予想となっており、実質成長率が1.4%、物価までも考慮した名目成長率が3.3%と、17年ぶりのデフレ解消を見込む。
 県内産業を見通してみても、全般的に薄日が差す産業が増えてきそうだ。
 当研究所で長野県内の主要産業19業種の景況を天気マークで予想しているが、2014年は、自動車部品や販売、工作機械、産業用機器、公共事業など19業種中6業種が薄日の好調となる見通しだ。詳細は当研究所「経済月報2014年1月号」をご覧いただきたい。
 内容を見ると、消費増税後の4月以降は、消費者の節約志向の高まりは避けられず、個人消費の一定の落ち込みが懸念され、一部小売店等は厳しい情勢も予想される。ただ、円安が定着してくる中で、大手取引先もようやく輸出数量を徐々に増やす見込みから、自動車産業を中心に県内下請製造業の受注が増加する。そして、国内製造業の受注拡大が設備投資に及び始め、工作機械、産業用機器なども持ち直してくる、これらのモノの動きは当然に貨物関連や機械器具卸などの仕事量を増やし、前年以上の荷動きが予想される。
 また、公共事業も消費増税に対する経済対策として2兆円程度があてられる見通しから、引き続き好調となろう。旅館・ホテルなど観光関係も景気回復の消費マインドの改善や、円安によるインバウンドの増加から堅調な推移が予想される。
 総じて、2014年はようやく景気回復の恩恵が長野県産業にも波及することが見込めそうな年と予想される。
 しかし、このシナリオには前提がある。消費増税後の景気落ち込みが経済対策等により限定的にとどまり、海外経済も安定的に回復を続けるというものだ。特に米国は景気回復に伴い、金融緩和の縮小を始めており、これが想定外の金利上昇や新興国経済の悪化を招くリスクには配慮が必要だろう。

2014年に求められること

 このように振返るに、バブル崩壊以降の失われた20年というのは、日本企業が変わる世の中にニーズに対応する新製品・サービスを十分に開発・提供してこれなかったという要因が大きい。
そのため、多くの業種で「雨降り」の経済情勢が続いた。ようやく3割の業種に「薄日」が差してきたこのチャンスに、売れる商品・サービスを開発して、“成長分野への事業展開”を図ることが2014年に求められる。
失われた20年から、回復のための20年の大きな転換の年となることを期待したい。
(2014.01.10)

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