オープンデータ・オープンガバメントが描く地域の未来
国や地方自治体、電力、交通など公共サービスを提供する企業が保有、蓄積している公共データを加工、編集しやすい形で公開し、民間企業や住民がこれを活用し、アプリ(応用ソフト)開発するなどして地域の課題解決に参加するオープンデータ、オープンガバメントの取組が始まっています。
行政サービス向上や地域活性化につながるもので、インターネットを使った新しい形態の行政への住民参加、官民連携による新しい地域づくり、行政の実現の芽として、徐々に注目が集まっています。
自動販売機のような従来の行政と市民の関係を変えるオープンガバメントの動き
オープンデータは、自由に使えて再利用もでき、かつ誰にでも再配付できるようなデータのことで、IT(情報技術)の進展で大量データ利用が可能になったことを背景に広がってきました。
日本で注目を集める直接のきっかけは、東日本大震災直後、被災者や避難所・救援物資情報、混乱した交通網の状況、放射線モニタリング情報、電力の逼迫情報や輪番停電場所の情報といった公共性の高いデータの公開と利用が必要になったことです。
一方、米国では2009年にオバマ大統領が就任した直後、「透明性とオープンガバメント」に関する覚書に署名し、オープンガバメントとオープンデータの取組を推進しており、わが国と比べると数年先を進んでいるといえます。
このオープンガバメントに対し、従来の行政と住民の関係は、自動販売機のようなものであると言われてきました。つまり、住民が税金を払うと、橋や道路や病院、警察や消防といったサービスが出てきます。自動販売機から思ったようにサービスが出てこないとクレームを言うように、住民が思うような行政サービスが受けられない場合に苦情をいう行動は、自動販売機を叩いたり揺さぶったりするようなものだといえます。しかし、最新のICT技術を使えば、市民は行政に声を届けることができ、行政と協力して、社会を変えることが可能になり、新しい地域の未来を描くことができます。
オープンデータ活用に向けた動きとして注目されるアイデアコンテスト
しかしこの取組を具体的に進めるには、どのようなデータを公開すれば活用が進むかという行政側、また、住民の利便性を高めるようなサービスをどのように作るかという民間側双方に課題があります。
この課題の解決策のひとつは、オープンデータの活用アイデアを広く募集するコンテストで双方のリテラシー(オープンデータの利活用能力)を高めることです。
こうした取り組みが国内でも実施されています。2013年11月10日(日)、千葉市の会場で「ビッグデータ・オープンデータの活用アイデアコンテスト」優秀作の発表がありました。これは、千葉市、奈良市、福岡市、佐賀県武雄市の4市が中心となって2013年4月に設立したビッグデータ・オープンデータ活用推進協議会が主催したイベントで、全国から221のデータ活用法が集まりました。
最優秀賞を獲得したのは、公立学校や幼稚園などからのインフルエンザなどの感染報告を元に地図上で発症状況を示し、家庭に注意喚起する「子ども感染症進行マップ」です。このアイデアは、家庭から学校への欠席届をスマートフォンからでも提出できるようにし、患者の位置情報を地図にまとめられるようするもので、これにより、家庭でも流行状況を一目で確認でき、感染症の予防に向けた取組を促せるとの発表でした。
他にも、地域ごとに年代別の人口や世帯の構成を把握できるようにし、どういった商店が多いのかを確認できるようにすれば、新たに店を出したい事業者の手助けになるとした優秀提案もありました。
オープンデータ活用による具体的なサービスやビジネスの創出による地域活性化に期待
こうした優秀提案は、今後、自治体と民間との協働により具体的にシステム開発も予定されています。
行政には、幅広く活用できる情報がたくさんありますが、これまでは行政内部だけで活用の可否、公開の可否を判断してきたといえるでしょう。これを今後は、行政情報は住民のものと発想を転換し、住民・民間と課題を共有し、一緒に解決に取り組むための仕組みとして、オープンガバメントとオープンデータに注目していきたいと思います。
(2014.1.9)
関連リンク
公共ソリューショングループ
電話番号:026-224-0504
FAX番号:026-224-6233