顧客のニーズつかみ成長戦略活用を(2013.12.31)

 秋の国会は特定秘密保護法の審議が中心となり、アベノミクスの成長戦略は脇に押しやられてしまった感が強い。しかし、成長戦略の骨子は既に固まっており、注目している経営者も少なくない。そうした折、日ごろ敬服する社長から、アベノミクスをどのように使って成長のチャンスをものにするのか、というお話を聞かせていただいた。
 その社長が「使える」と期待しているのが「緊急構造改革プログラム」に盛り込まれた設備投資に対する支援策だ。生産性の高い先端機器や省エネ機器などの投資には、優遇措置が講じられている。「われわれはお客さまの本当に欲しいものをまだ十分に提供していない」「探れば、お客様の需要はいくらでもあり、それを満たすための設備投資をするなら今だ」。消費が飽和しているのは従来品、ということなのだ。

 長野経済研究所が11月に実施した「2013年度設備投資動向調査」では、設備投資額が前年を上回る見込みの企業が多くなっており、投資マインドの改善がうかがえた。しかし、政府の今後3年間にわたる減税措置などの新たな投資促進策を前提に、今後3年程度の設備投資方針を聞いたところ、増加予定とする回答割合は2割にとどまった。県内企業の新たな需要に向けての設備投資は、まだ様子見の段階だ。

 振り返るに、バブル崩壊以降の失われた20年というのは、変わる世の中のニーズに対応する新製品・サービスを、日本企業が開発することができなかったという側面が強い。それゆえに、今企業がなすべきことは、アベノミクスにより作り出された好環境下で、ニーズに合った売れる商品を作り、成長分野への事業転換を図ることである。

 そうした視点から成長戦略を見るのなら、優遇措置を受けられる先端設備の導入は、いの一番に検討してみるべき施策だろう。しっかりとお客様のニーズをつかんでいれば、冒頭の企業のようにチャンスを手にできる。簡単なこととは思わないが、成長戦略は自社なりに使いこなすことが重要なのだと思う。

(初出:信濃毎日新聞2013年12月31日朝刊「提言直言」『顧客のニーズつかみ成長戦略活用を』)

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