都市の再生が産業再生にも不可欠(2013・9・23)

 先に国土交通省から都市再構築戦略検討委員会の中間とりまとめが公表された。人口減少のもとでの目指すべき都市構造のあり方と、それを実現する戦略を示したものだ。本委員会に地方シンクタンクとして参加してきた立場から、委員会での議論を踏まえ、都市の再生が産業再生にも不可欠であることを強調したい。

 現状、人口10万人規模の地方都市に多く見受けられる問題点として、ここ数十年間の人口が横ばいであるにもかかわらず、市街地の面積が3~4倍まで拡大し、都市の空洞化が進んできたことがある。背景には、地価が安い郊外部で商業施設などの開発が進み、車依存の生活と相まって郊外での住宅建設が進んだという現状がある。このままの状況が進むなら、人口密度がさらに低下して、中心部での医療・福祉・商業など都市の生活を支える機能が維持できなくなる恐れがある。

 そのため、今後の地方都市においては、住居の集積と生活や経済を支える都市機能を再配置することが求められる。こうした人口減少を前提としたものに国の都市政策が転換していくことを本委員会では宣言している。

 ここでわれわれが強く認識しておかなくてはならないのが、都市の空洞化が地方産業の衰退を加速するということだ。つまり、生活に不便な街では人口減少が加速し、結果、雇用確保が難しくなり、企業の撤退がさらに進行していく。また、優秀な労働力が確保できない地域では企業誘致もままならない。もとより地方都市では製造業の衰退が空洞化を深刻化させており、産業と都市が双方向に空洞化のスパイラルを増長させることになる。

 地方において産業や働く場を作ることは、喫緊の課題であるが、その際に「快適な暮らしが営まれる街も同時につくっていく」という視点を忘れてはならない、ということである。

 国は都市政策の転換を明確にし、地方自治体に対し、目指すべき方向とそのためにとりうる施策手段を示すとしている。長野県の自治体も都市と経済の再構築に向け、国のオプションを選びうるだけの主体性を持ったビジョン策定が早急に必要となるだろう。


(初出:信濃毎日新聞2013年9月23日朝刊「提言直言」『都市の再生が産業再生にも不可欠』)

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