信州ブランド戦略は県民の地域への愛着を深めることから<2013.06.03>

信州ブランド戦略、具体的推進の段階に

 昨年度、国内の消費者、企業、海外等から「選ばれ続ける長野県」を目指し、統一感のある信州のブランドイメージと、それを推進するための戦略を検討するため「信州ブランド研究会」が立ち上がった。
 私もそのメンバーとして参加し、1年間議論を重ね、先般信州ブランドを推進していくためのコンセプト「しあわせ信州」が公表された。
 研究会の経緯をかいつまんで紹介すると、「信州らしさとは」からの議論から始まった。信州は健康長寿であり、勤勉で教育熱心、温かい人の営みや、美しい自然がふんだんにある。そうしたイメージの総体として「信州主義」というブランドコンセプトが先ず出来上がった。そして、多くの日本一の資源を持ち、47都道府県の中で幸福度NO1との評価もあるような「しあわせ」を多くの人と分かち合いたいとの思いから、国内外に発信するためのキャッチフレーズとして「しあわせ信州」が構想された。
 このキャッチフレーズを軸に、信州ブランド戦略を具体的に推進していこうというのが今年度である。
 ここで欠かせないものが「県民の地域への愛着であり、地域産品への愛着」である。住民が愛着を持たないような地域に人は来ないし、愛着のない産品は買ってもらえる筈がない。実際、信州ブランド戦略でも、キャッチフレーズ「しあわせ信州」を支えるスローガンを、地域への愛着がベースとの考えから「掘り起こそう、足元の価値。伝えよう、信州から世界へ」として県民運動の合言葉と位置づけている。
 そこで、信州ブランド戦略の実施に先立って当研究所では、県民の地域や地域産品への愛着度を確認するため「県民の地域に対する意識と愛着に関する調査」を行った。(「消費動向調査」付帯調査として実施。時期:今年1月、対象:県内の600人の個人。詳細は「経済月報2013年4月号」参照)

「県民の地域に対する意識と愛着に関する調査」の結果

 まず、「長野県と自分の住む地域への愛着度」をたずねた。
長野県に対する愛着度は平均70.7%の回答、自分の住む地域への愛着度は平均54.7%の回答となった。長野県に対する愛着度は各地域より高くなっているが、それぞれの地域でも全て長野県に対する愛着度の方が高い回答割合となった。要するに、地域ブランド戦略としては、先ず「長野県」をアピールすることで、各地域、各産品の情報を発信していくことが適当であると考えられよう。
 では、その長野県だが、長野という呼び名の他に信州や信濃とも称される。そこで「長野県をアピールするにふさわしい言葉」をたずねると、「信州」が76%と圧倒的に多い結果となった。冒頭紹介した信州ブランド研究会のコンセプト「しあわせ信州」の「信州」が多くの県民に支持されている言葉であることが分かる。
 それからもうひとつ「長野県で採れる農産品や、作られるモノに対する購入意向」では、「積極的に購入したい」が38.1%と高く、「ものによるが購入したい」の61.1%を合わせると、ほとんど全ての回答者が、長野県の産品に対する一定の購入意向を持っていることが分かった。
 長野県は、地域ブランド推進の前提となる「県民の地域や地域産品への愛着」が高い県であると言えるようだ。この前提のもと、県民が支持する産品を磨き上げ、アピールし、売っていくのが今年度の行動となる。
 では、どのような産品から手掛けていくべきか。「長野県産品で積極的に購入したいもの」をたずねると、野菜、リンゴ、米。「県外に住む大切な人やお世話になった人へ贈りたい産品」では、りんご、そば、ぶどう。「県外の人にあまり知られていないが勧めたい産品」では、地酒、ワイン、農産物加工品がそれぞれ上位となった。

長野県民の高い地域愛着度をベースに信州ブランドの推進を

 こうした県民が支持する産品を見極め、磨き上げ、信州という長野県をアピールする言葉を旗印に、いいものだから高く売れるという発想から、「いいものだから高く売る」という行動に移るときだ。
 具体的には、県ではワインをトップランナーとして先行着手したいとしている。今や当県は醸造に使うブドウの生産量が全国1位とポテンシャルは高く、県は今年の3月に「信州ワインバレー構想」を立ち上げている。
 ぶどう同様、機は熟したと言える。県内一丸となってブランド化を進めたい。

(2013.06.04)

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