「信州ブランド」高く売る戦略、構築を(2012.09.21)

 この春、長野県に信州ブランド推進室が設置された。7月には信州ブランド研究会も立ち上がり、私もメンバーとして具体的な戦略を検討している。今、なぜ「信州ブランド」なのか。直言しておきたい。

 あまり知られていない事柄だが、長野県のデフレーター(物価変動を表す指数)は、今世紀に入ってから全国最下位となっており、さらに年々その数値は下がっている。つまり、長野県企業が取引する価格は、全都道府県の中で最も厳しく値下がりを続けているということだ。

 要因はさまざまだが、下請け比率が高い当県製造業の場合、グローバル競争の影響をダイレクトに受け、厳しい単価引き下げが間断なく続いてきている。先のデフレーターを示すと、2000年の99.6に対し、08年は56・3と衝撃的だ。

 小売・スーパーでは隣県からの新規出店が相次ぎ、過当な価格競争にさらされている。さらに観光立県長野と思いきや、JTBの「旅行者動向2011」によれば、長野県を訪れる旅行者の平均費用は全都道府県の中で35位とかなり低い。要するに、長野県は、モノを高く売れない県になってしまっているということだ。

 となれば、向かうべき方向性は明確だ。現状の安売り競争や、低付加価値な産業構造をどうするのかということになろう。ここに一つの明確な解を示してくれるのが「ブランドの構築」である。分かりやすい例を挙げるのなら、フランスのボルドー産ワインやルイ・ヴィトンのバッグなどだ。これらは理不尽な値引きとは一線を画する商売を続けている。

 さらに結果としてフランスのファンは多く、年間約8千万人の海外観光客を呼び込んでいる。日本のざっと10倍もの人数である。当然、一朝一夕に長野県産業をフランスのように、というわけにはいかないが、今ある高品質商品・サービスをさらに磨き上げて信州ブランドを構築し、しかるべき価格で売る、という方法は検討されるべきだろう。

良いモノだから高く売れるに違いないとの幻想は捨て、良いモノゆえにどうやったら高く売 れるかといった戦略を構築する時に来ている。


(初出)信濃毎日新聞2012年9月21日朝刊「提言直言」『「信州ブランド」高く売る戦略、構築を』

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