県内中小企業、大震災を連携の契機に(2011.06.15)

 東日本大震災後の長野県経済をどのように描いていったらいいのか。
 長野経済研究所では、3月の震災前の段階で、長野県経済の10年後をレポートした。リーマン・ショックの傷がようやく癒えた時点での予測であったが、それでも延長線上のシナリオはかなり悲観的なものとなった。10年後の県内GDPは、リーマン・ショックで大幅に落ち込んだ2008年度の水準さえも下回る。県の主要産業である製造業では、製造品出荷額、事業所ともに2割程度減少する。国内大手メーカーは、市場が拡大する振興国に生産拠点を設置する動きを一層強める。加えて円高が定着する中、海外生産の拡大や現地調達率を高める動きが続く。

 今回の震災は、この動きをさらに加速するものとみられる。エネルギーの制約と地震リスクが、大企業をはじめとする製造業の生産拠点を海外にシフトさせる誘引を高めているからだ。下請け製造業の割合が全国有数の長野県では、このような大企業の影響をダイレクトに受けざるを得ない。

 大企業とともに海外に出ることで生き残りを図る企業がある一方で、大多数の中小製造業では出る術(すべ)を持たない。そのため、大企業の海外進出が加速する中においては、受注減少や一層の単価引き下げから事業に行き詰まる下請け企業の急増が予想される。どうしたらいいのか。

 外部とつながり合う「連携」を進めるべきだと考える。下請け企業はそれぞれ優れた技術を持っていても、守備範囲が極めて狭い。そこで、他社と連携することで受けられる仕事の範囲を広げたい。さらに技術に対しては大学などとの連携により開発を進めたい。販路開拓も同様だ。こうすることで、大企業にとって不可欠なパートナー、もしくは大企業に頼らない独立企業群を目指すべきだ。

 1社でたたずんでいては、足元は沈み込むばかりである。とにかく動いて、足りない部分は外部との連携で仕事の幅を広げていきたい。下請け企業群を崩壊させてしまっては、長野県経済の将来像は描き得ない。震災を連携の契機とすべきである。

 

(初出)信濃毎日新聞2011年6月15日朝刊「提言直言」『県内中小企業、大震災を連携の契機に』

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