身の丈に合った生活スタイルの模索(2010.06.24)

 いまだくすぶるギリシャ問題に、日本を重ね合わせている人も多いのではないだろうか。金融にかかる特殊事情はあるものの、ギリシャ問題はより根本的には自国の貯蓄以上に、個人や財政が消費を行うという「身の丈」以上の生活をした結果だ。
 一方、「日本は国内貯蓄約1500兆円で賄っているから大丈夫」との見方もあるが、債務残高が既に国内総生産(GDP)の1・8倍にまで膨れ上がり、これを減らしていく道筋も示されていない。
 さらに本年度予算の国債依存度は、なんと48%と過去最大となっている。つまり、日本は収入の2倍の生活をしている訳で、ギリシャ同様「身の丈」以上の生活をしていることになる。われわれはいよいよ今の生活を改めなくては、国家が立ち行かない段階にまで来てしまった可能性が高い。
 こうした中、2世代同居をあらためて評価する声を多く聞く。「核家族」こそが身の丈以上という指摘だ。確かに世帯が分散して住むということは、経済的でないばかりか、高齢者の面倒を行政に押し付けることだ。これが歳出の3割を占める社会保障費の年金、介護、医療等を激増させる一因ともなっている。
 2世代同居であれば、ある程度の介護が可能なばかりか、年金が減額されても生活に致命的な打撃を与えることは少ない。国家財政が豊かであれば許容される核家族も、今の日本では「仕分け」の対象だろう。
 しかし、長野県の実態をみると、核家族や一人暮らしは、既に全世帯の8割を超えている。特に一人暮らしは急増しており、現在でも全世帯の26%と最も多く、さらに20年後には33%に跳ね上がる。つまり、大家族が「身の丈」とは言え、そこへの回帰はかなり難しいのが現状だ。
 となると今後は、地域という共同体の強化や、一人暮らしの高齢者は施設等で共同生活を甘受していくなど、大家族に代わる受け皿を用意していくしかない。

 他人とのつながりを敬遠してきた核家族世代にとって豊かな老後は、再び他人とつながり合うことでしかつかめないかもしれない。


(初出)信濃毎日新聞2010年6月24日朝刊「提言直言」『身の丈に合った生活スタイルの模索』 

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