生物多様性から学ぶこと(2010.02.23)

COP10が10月に名古屋で開催される

 今年10月にはCOP10が名古屋市で開かれる。これは昨年コペンハーゲンで開催された気候変動枠組条約締約国会議と同じCOPと称されるので紛らわしいが、多様な生物や生態系を守り、その恵みを将来にわたって享受するため結ばれた生物多様性条約のことだ。現在193の国と地域がこの条約を締結しており、今回で10回目を迎える。
   現状、地球上には、科学的に明らかにされている生物種が約175万種、未知のものも含めると3,000万種とも言われる膨大な生物が存在している。ところが、同時に世界中で数多くの野生生物が絶滅の危機に瀕している。絶滅のおそれの高い種として9,000種近い動物や約8,000種の植物がリストアップされている。日本でも、環境省からの発表のよると約3,000種が絶滅のおそれのある種とされている。

なぜ、生物の多様性が重要なのか

 約40億年もの進化の過程で出来上がった膨大な生物種は多様な生態系を形成し、複雑な関係を織り成し、精密なシステムとして地球環境と我々の暮らしを支えている。世界的な調査「ミレニアム生態系評価」は我々人類が生物多様性から受けている恩恵を4つのサービスとして分類している。
 まず、水や栄養の循環など、人間を含むすべての生物種が存在するための環境を形成、維持する「維持的サービス」。2つに、汚染や気候変動、害虫の大発生などの変化を緩和し、災害の被害を小さくする「調節的サービス」。3つに、食料や繊維、木材、医薬品など、人間に衣食住を提供している「供給的サービス」。4つに、レクリエーション機会の提供や美的な楽しみや精神的な充足を与えている「文化的サービス」などである。
 このように物質的な面から精神的な面に至るまで、私たちは多様性をもつ生態系からの恩恵を受けながら生命を維持し、生活していることが分かる。そのため、生物の多様性が破壊されると、どこにどのような影響が及ぶか想像もつかない。

そして人間社会、企業でも尊重さるべき多様性

 この多様性という観点から、我々の社会や企業を考えてみたい。
例えば、市場経済は、多様な売手と買手から構成されている。その際、もし市場プレーヤーが皆同じ価値観や能力であったなら、市場は機能しないだろう。株式市場で例えるなら株価1万円が高いから売りたいという人と、安いから買いたいという人がいて初めて成り立つ。
 同様に、企業においても、これだけ社会が成熟化しニーズが多様化する中においては、とても単一的な人材だけでは、市場の変化に追いついていけない。
 近年、企業でも外国人や障がい者、女性、高齢者などを参画させることがより強く求められているが、これは単に社会的貢献やCSRだけといった観点から捉えられているうちは意味がない。多様な人材が企業内に存在することで、多様な組織、商品、サービスを創造できる。多様な人材登用は、そのための企業戦略と捉え、はじめて意味をなす。

 近年の日本経済の閉塞感は、こうした多様性を内部に織り込みきれない組織構造に起因する面も多いのではないか。
 多様性を排除した社会や企業は脆弱性を孕むことを、生物多様性は教えてくれている。

(参考資料)生物多様性条約第10回締約国会議支援実行委員会ホームページ
(2010.02.23)  

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