クララに学ぶ働きがい(2010.02.09)

何に働きがいを求めるのか 

 世界同時不況で仕事が減り、さらにグローバル化の進展で中国などとの競争一層厳しくなっている。さらに慢性的なデフレ状況の中、給料が上がらないという状況が長野県では定着してしまった。
 そうした給料を上げることができない環境の中で、どのように社員のやる気を維持したらいいのかと頭を悩ませる経営者も多い。そこで今回は、働きがいについて考えてみたい。

仕事に対するモチベーションに関する調査

 働きがいに関する調査では、野村総合研究所が将来の経営の重要な視点を探るため、「仕事に対するモチベーションに関する調査」というものを2005年に実施している。
 これによると、「若手がやりがいを感じる仕事」については、「報酬の高い仕事」が約3割とトップ、次いで、「自分だけにしかできない仕事」、「新しいスキルが身につく仕事」、「お客様から感謝される仕事」がそれぞれ2割の回答となっている。
 では、お金以外の報酬として重視しているものは何か。
 それは「仕事自体の面白さや刺激」が約4割と最も多く、次いで「同僚や後輩から信頼されたり感謝されたりすること」、「顧客から感謝されること」がそれぞれ3割強となっている。
 やりがいを感じる仕事にしても、お金以外の報酬にしても、「まわりに信頼されたり、感謝されたりすること」、つまり、「人の役に立つこと」が仕事のモチベーションを上げるために重要なことがわかる。

クララが教えてくれた働きがい

 この「人の役に立つ」ということについて、先日、国際教養大学でエコノミックガーデニングを研究されている山本尚史准教授から興味深いお話を伺った。
 「アルプスの少女ハイジ」には、友達ペーターと彼の目の見えないおばあさんがでてくる。このおばあさんの夢は、目が見えず聖書が自分では読めないので、誰かに聖書を読んで欲しいというものだった。しかし、ハイジもペーターも字が読めないため、誰もおばあさんに聖書を読んでやることができなかった。そこにクララが現れた。クララは教育を受けており字が読めたので、おばあさんに聖書を読んであげることができた。おばあさんは長年の夢が叶い非常に感動した。
 話しはここからなのだが、山本先生はこのクララに生きる意味を見た。それは、本当に感動をもらったのは実はクララだったということに気づいたからだという。クララは足が悪く、人生のほとんどを「人の世話になる」という境遇で生きてきた。そのクララにとって、「自分も人の役に立てる」ということをこのおばあさんは気づかせてくれた。クララはそのお陰で自信を取り戻していく。そして、実際に自分の足で立ち上がるのだ。
 このように「人の役に立てる」という思いは、我々を奮い立たせる力がある。同じように、仕事でも「人の役に立つ」ことこそが我々にやりがいを感じさせてくれ、モチベーションを上げてくれるのではないかと。

「人の役に立つ」がこれからの経営ではより重要に

 人が生きがいを感ずる事の一つは、間違いなく「自分が人の役に立てる」と感じる瞬間であろう。だから当然に仕事でも、お客様の役に立ち、感謝されることが大きな報酬となる。食べることに困っても「人の役に立つことが重要」なとど極論を言うつもりは毛頭ないが、少なくとも給料を上げ続けることができない状況下では大切な視点だろう。
 要するに、現在のように厳しい時代には、「お客様の役に立っている」と社員が感じることができる仕事の仕組みを作り上げることが必要だ。そして、それを評価の軸にすることで、社員のモチベーションは上がり、社内でも評価され、お客様も満足する。その結果として業績も上がっていくのではないか。
 ポストもお金も限られていく中で、働くモチベーションを維持するためには、社員の「人の役に立っている」という満足感を軽視すべきではない。


(参考)「仕事に対するモチベーションに関する調査」株式会社野村総合研究所(2005年10月)

(2010.02.09) 

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