2010年代の長野県製造業の方向性について(アンケート調査より)(2010.02.01)

進む円高・東アジア市場の拡大の中で 

 今回の不況下で一段と存在感を増しているのが、中国を中心としたアジアだ。昨年の4-6月期からの回復は政府の経済対策もさることながら、アジアへの輸出の回復によるところが大きい。

 今後、日本及び長野県の製造業が一層アジアに軸足を移していくことは容易に想像できる。
こうした問題意識の中、12月に県内製造業に対し「円高進行が県内製造業に及ぼす影響に関するアンケート調査」(対象企業1,600社、うち有効回答453社)を実施した。
 その結果から、見えてきた長野県製造業の海外移転の現状や今後の方向性について考えてみたい。

輸出企業に甚大な影響を与える円高への対応は

 先ず、輸出をしている企業に対して円高の影響を尋ねた。結果、8割近い企業でマイナスの影響を受けていることが分かった。その対応策を聞くと、為替予約などによる対応が2割程度の企業で行われているが、半数の企業では短期的には適切な対策の打ちようがなく「実施していない」という回答だった。
 しかし、今後については「円建取引を増加させたい」とする企業が半数を占め、「海外からの調達を増加させたい」とする企業も2割に上った。

海外に拠点のある企業は今後、海外での生産をさらに増やす見込み

 次いで、既に海外に工場や販売拠点のある企業に「今後の事業展開で強化を予定している国・地域」を尋ねた。
 7割の企業が中国、4割の企業がインドネシア、マレーシア、フィリピン、タイなどのアセアン諸国と、アジアでの事業展開の強化を考えていることが分かった。一方「縮小したい国・地域」としては、日本とする企業が7割と圧倒的に多く、海外に拠点を持つ企業の7割が日本での生産を縮小し、東アジアでの生産・販売拠点を強化する意向が明らかになった。
 さらに、拠点設置の目的を尋ねると、今までは「労働力等生産コストの削減」とする企業が7割と圧倒的に多かったが、今後は「市場の開拓」とする企業が5割と最も多くなっている。中国をはじめ東アジア市場の成長性に対する期待が高く、その市場が生産拠点をも引き付けている。
 こうした結果をみていくと、今後の長野県内での雇用や生産の行方が気になるが、それらの5年後の見通しを尋ねてみた。すると、雇用では3割の企業が、生産では4割の企業が「減らす見通し」との回答を寄せている。

長野県製造業の方向性をどう考えればいいのか

 こうした見通しの中で、将来の長野県内の生産体制の位置づけはどうなるのかを尋ねた。すると県内では、「既存分野製品の高付加価値化」や「合理化によるコスト削減」をしていきたい。また、「本社機能や研究開発部門を強化したい」という意向がおのおの4割以上となった。
 国内で生産するには、アジアに負けない高付加価値品かコスト競争力を持つ製品に限られ、それ以外の生産機能はアジアに移すということだろう。そうした部分に加え、県内には本社機能、研究・開発に関連した部門しか残らないということが想定される。
 円高局面のたびに加速してきた「加工・組立」部分の海外移転は、東アジアの新たな市場としての成長でさらに加速度を増している。
 今後、長野県に残ることができるのが、高付加価値品の製造拠点や研究・開発部分だということになれば、研究所や研究開発型企業がより多く集積する長野県を構想しなくては、現状の雇用は維持しえない。
 まことに困難な道程ではあるが、こうした構想を実現することなしに将来への展望は開けまい。まさに正念場の2010年代が始まった。

(2010.02.01)

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