不況でも仕事を減らさない努力を(2010.01.21)

 2010年がスタートした。県内経済にとって、明るい兆しが見える年になってほしいものだ。ただ、円高基調は依然として続いており、デフレの進行も重い足かせとなって、ややもすると景気は腰折れしかねない状況にある。
 ここで、あえて問題提起してみたい。景気が悪くなると仕事が減るのは「当たり前」なのだろうか―と。
 県内のある経営者の話を紹介しよう。不況期には市場が縮むため、自社の仕事も当然減るが、「その減り方が、市場の縮小ペース以上になる場合が要注意だ」という。仕事を競合企業に食われている可能性が大きいからだ。この経営者は仕事が減ったら即座に取引先に赴き、実態をつかみ、競合先に負けない提案をし、食われた分を奪回するよう努力する。その結果、以前よりシェア(市場占有率)を増やすこともあるという。やり方によっては、不況でも仕事を減らさない、あるいは増やすことさえ可能なのだ。
 一方で、「景気が悪ければ仕事が減るのは当然」と、積極的な行動に出ない経営者も少なくない。そもそも、市場について十分把握していないから、景気が良くなるのを待つという姿勢に終始してしまう。しかしながら、景気が良くなれば仕事が増えるという保証はどこにもない。
 仕事が減っているのを不況のせいにせず、自社のやり方が的を射ていないと考え、新たな展開を考える―。経営者がそうした発想をできるかどうかが、不況の傷を致命傷にしてしまうか、浅くとどめて再浮上できるかの分かれ目になる。
 経済発展の原動力は、企業家としての経営者の革新をおいてほかにない―。20世紀を代表する経済学者、シュンペーターはそう喝破した。今年は発想を転換し、不況期に仕事を増やしてみせるような、長野県企業の底力が試される年なのだと思う。

(初出)信濃毎日新聞2010年1月10日朝刊「提言直言」『不況でも仕事を減らさない努力を』

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