温室効果ガス削減の中期目標と長野県の対応(2009.07.14)

明らかになった日本の温室効果ガス削減の中期目標 

 麻生首相は6月10日、日本の2020年までの温室効果ガス削減の中期目標を発表した。それによると、2020年の温室効果ガスを05年比15%削減するというもの。2050年には60%とか80%を削減しますというような曖昧な目標に比べ、中期目標はわずか10年先。確実に達成するという決意がこめられたものだと評価できる。
 目標達成に向けては、現在2%程度の太陽光発電や小水力発電などの再生エネルギーの比率を20%まで引き上げたり、原子力発電の活用、新車の半分をエコカーにする等の方策を検討している。
 太陽光発電は技術的に確立しているが、小型水力発電は法制度面でも技術面でも開発途上の部分が多いシステムである。そこで小型水力発電の普及に対しては、早速、6月29日、農水省、経産省、国交省の3省が「小水力発電連絡会」を立ち上げ、8月までに課題をまとめることとしている。水力発電を河川に設置する際の水利権の問題やメンテナンス技術などの問題を整理し、利用を促す契機にするものと考えられる。

長野県の新経済対策でも環境への先行投資が打ち出される 

 長野県でも新経済対策「くらし・地域力向上プロジェクト」を5月29日に発表している。これによると環境への先行投資として、やはり太陽光発電と小水力発電の推進を挙げている。具体的には、太陽光発電については、(1)県の保有する施設への導入や、(2)太陽光発電を導入しようとする中小企業の支援、(3)設置技術者のスキルアップを図る等の施策を講じている。
 小水力発電については、「農業用水等を利用した小水力発電の促進」として、(1)身近にある水をエネルギーとして有効に活用するため、農業用水等を利用した小水力発電施設の設置候補箇所の調査の支援、(2)小水力発電を推進するため、河川を取水源とする農業用水路を利用した水力発電を行う場合の事務手続きの簡素化を国へ要望する、としている。

長野県らしい新エネルギー“太陽光発電・小型水力発電”

 長野県は日照時間が東京より長く、更に松本市や諏訪市では南国高知・宮崎よりも長く、太陽光発電に有利な自然環境を備えているといえる。長野県が平成11年に作成した「新エネルギー活用指針」によれば、県内全ての木造家屋の屋根面積の半分と非木造家屋の4分の1に太陽光発電を設置すると想定すれば長野県の年間の消費電力の3割がまかなえる計算になるとのことで、その大きさに驚かされる。
 水力発電も発電可能な電力量は、全国の中でも岐阜県、富山県に次いで3位という位置付けにある。急峻な河川や農業用水が多い長野県にとって水力発電は地域資源を生かした取組みといえる。
 すなわち、「サンサンと降り注ぐ太陽光」と「豊富な水資源」を活用したエネルギー開発は、いかにも長野県らしい新エネルギー対策だ。さらに、長野県製造業にとっても小水力発電は新エネルギーの中では比較的組み易く、中小製造業が着手でき、地域への波及効果が期待できる分野だと考えられる。
 環境保全への取組みが長野県に新産業を創出するといった両睨みの取り組みが望まれる。

(2009.07.14) 

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