森光子さんの国民栄誉賞から考える日本経済の処方箋(2009.06.11)

女優の森光子さんに国民栄誉賞が 

 5月の29日、女優の森光子さんに、国民栄誉賞が贈られた。1961年の初演から主演を続けてきた舞台『放浪記』上演2000回の快挙を賞してのものだ。河村官房長官は受賞の理由として「芸能分野の第一線で常に多彩な活動を繰り広げ、国民に夢と希望と潤いを与えた」と語ったが、まさに「国民に大きな夢と希望」を与えたことは間違いない。
 ご存知のとおり、森光子さんは外見や女優としての活動からは50~60代にしか見えないが、現在89歳。その年齢であの若さと活躍には本当に驚く。まさに『シニアの星』である。この事実から我々は「輝き続けるシニア」というものは可能なんだという好事例を学んだのではなかろうか。

ところが輝くはずのシニアの実態は

 お金が全てという訳ではないが、1,500兆円という巨額の個人金融資産の6割が60才以上の高齢者のもとにある。これらのお金が動いてくれることで、実は不況など吹き飛んでしまう。話を単純化して考えてみるなら、経済が1%成長するということは、日本のGDP約500兆円のうち余計に5兆円が使われれば良いということだ。1,500兆円から見れば、すずめの涙ほどの額だ。
 ところがこのお金が動かない。つまり、輝ける筈のシニアの皆さんは将来不安や、輝くために使う術を知らぬまま、持てる巨額のお金が凍りついている。

森さんをみて「私にもできるかも」

 そこで現れたのが森光子さんの国民栄誉賞だ。
多くのシニアの皆さんが「私にもできるかも」と明るい前向きな気持ちになれたのではないか。この「私にもできるかも」という気持ちが非常に重要だ。なぜなら、とかく年をとるに従い「もう年だから」とか「年甲斐もなく」と行動が消極的になり、結果、消費行動も沈滞してしまう。
 そうした中、森光子さんの活躍を見て改めて、「年甲斐もなく」なんてことはまったく無く、第2の人生である定年以降を、現役時代以上に積極的に生きる勇気と希望をもらえたのではないか。

青春とは若い精神の中にある

 「青春とは」(サムエル・ウルマン作)という詩はあまりに有名だが、森さんの話を聞いたときに正にこの詩のとおりだと思った。かいつまんで紹介しよう。「真の青春とは若い肉体の中にあるのではなく、若い精神の中にこそある。大切なのは、強い意思、豊かな想像力、燃え上がる情熱、そういうものがあるかないかだ。誰にとっても大切なものは感動する心や、眼を輝かせる子供のような好奇心、胸をときめかせ未知の人生に挑戦する喜びだ。年を重ねただけで人は老いない。夢を失った時初めて老いるのだ。」
 つまり、夢を持ちトキメいている限り一生青春であり、年だからと遠慮する必要はまったくない。むしろ、自分を縛っていた企業という檻から開放されたのだから、自由に音楽やスポーツ、ドライブ、旅行を楽しんだり、お酒やお洒落だって若い時以上に楽しんで人生を豊かにすべきだと思う。恋だって決してご法度ということはない。もっとカッコ良く、もっと綺麗に生きられるのだ。

望まれるシニアが輝く商品・サービス
 そのための商品やサービスこそ、シニアの皆さんを幸せにする大きな術だと思うが、これが十分ではない。世に氾濫する商品の多くは、中年までは輝かせても、シニアを輝かせるものは乏しい。
即ち、我々産業人にとって、シニアの望む商品やサービスとは何かを正面から考え、提供していくことがこれから非常に重要となる。
 こうしたシニアの皆さんを幸せにするような消費活動が盛んになっていくことこそが、1,500兆円という氷河を溶かし、元気のない日本経済にとって最大の処方箋のひとつになるのだと思う。

(2009.06.11) 

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