善光寺御開帳の経済学(2009.03.06)

いよいよ4月5日から5月31日まで善光寺御開帳 

 100年に一度などと言われるような大変な不況の年の善光寺御開帳ですが、実は振り返ってみると常に、御開帳の年は大変な年となっています。
 前回2003年はイラク戦争や中国でのSARS問題が起こった年、その前の1997年にはアジアの金融危機で日本でも大手証券会社や大手銀行が破綻しました。そして、その前の1991年は日本のバブル経済が崩壊した年、更にその前1985年はプラザ合意で円ドルレートが240円から120円への急激な円高への転換の年となっています。
 こうみると、世の中が大動乱に見舞われると、善光寺の御本尊様が世の中の平静を取り戻そうと、姿を現すと考えたくなる年まわりです。
 良く知られますように、経済は循環があり、企業の在庫投資が起因する約3年の周期「キチンの波」、企業の設備投資が起因する約10年の周期「ジュグラーの波」、技術革新が起因すると考えられている約50年の周期「コンドラチェフの波」などですが、私はここに6年周期の経済危機が訪れては回復していく「善光寺御開帳の波」というのがあるのではないかと思います(笑)。 

経済効果も大きく、0.7%の経済成長も期待

 経済危機の年にご本尊が現れ、不景気を蹴散らしてくれるというご利益は、経済波及効果として現れます。
 前回の御開帳の経済効果はおよそ1,035億円で、県内総生産を約0.7%押し上げる効果となりました。具体的に見てみますと、参拝者の75%が県外の方で、その内6割が宿泊することから、宿泊費やお土産代、飲食費、交通費などの形でお金が長野県内に落ち、県経済を押し上げたものです。
 内需に弱い日本の中で、例え長野県レベルでも経済を0.7%も押し上げるという効果は凄いものです。
 また、今回は長野の善光寺のほか、飯田の元善光寺など6つの善光寺で史上初の同時開催が成されることから、さらなる経済効果の上乗せを期待できます。

何故、善光寺はこのような人気を誇るのか

 先ず、積極的なプロモーション活動を行ってきたことがあげられます。古くから「出開帳」を通じた全国に向けたプロモーション活動は盛んでした。「出開帳」の結縁は善光寺信仰を広め、全国の参拝者を吸引してきました。併せて、善光寺はすべての宗派、老若男女に門戸を開いてきましたから、巨大な女性マーケットをも開拓したのです。
 二つ目に群を抜いたブランド形成力が挙げられます。
ご開帳の対象は「前立本尊(まえだちほんぞん)」でご本尊は阿弥陀如来で秘仏です。この秘められた美という神秘性が様々なストーリーを創造し、善光寺のブランドを形成しているのです。
 三つ目は、顧客満足度を高める試みで、ご本尊との結縁を確かなものとする仕組みがあります。それは極楽浄土を叶えてくれるということを実感する「お戒壇巡り」や、お朝時の「お数珠頂戴」、万病を治す「びんずる尊者像」などです。京都、奈良などにも多くの神社、仏閣があるがこうした参拝者を満足させるような仕組みはなかなかないものです。
 今年の経済成長率はマイナスが予想されていますが、長野県だけは善光寺さんの御開帳のお陰で、プラスの成長を・・・と期待したいところです。

(参考「経済月報」No229 2003.5『経済ウォッチング』一生に一度は参れ善光寺に学ぶ(調査部長平尾勇))
(2009.03.06) 

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