危機の時代の新たな視点「資源大国日本の挑戦」(2009.02.26)

視線を高く見据える時期に 

 10-12月期のGDP▲12%(年率換算)という数字にマスコミは大騒ぎをしていますが、産業界では、すでにパニックの時期から腰を据えた対応の段階に入っているようです。最近、県内の企業を訪問してみますと「次の景気回復の波に乗るにはどうすれば」と将来を見据えた高い視線へ関心が移っていることに気がつきます。
 そうした高い視線から日本を見た場合、「資源大国日本」というような一瞬耳を疑いたくなるような話も、あながち荒唐無稽な話とも言い切れないのでご紹介します。 

世界有数の資源が眠る都市鉱山

 日本は資源のない国というのが常識的に語られるところです。ところが、家電など工業製品に含まれている金属(「都市鉱山」と呼ばれています)について日本国内に蓄積されている全ての量を算定すると(独立行政法人物質材料研究機構算定)、日本は世界有数の資源国に匹敵する規模になっていることが明らかになっています。(資料:「わが国の都市鉱山は世界有数の資源国に匹敵」(独)物質材料研究機構(2008.01.11))
 同法人の計算によると、金は約6,800トンと世界の現有埋蔵量42,000トンの約16%、銀は60,000トンと22%。他にもインジウム61%、錫11%などと世界埋蔵量の一割を超える金属が多数存在しています。

世界第6位の海洋国家日本

 また、日本はちっぽけな島国で、国土面積は世界で61位、あるのは海だけ!というのも常識的に思い込まれているところです。しかし、排他的経済水域、つまり沿岸から200海里(約370km)の範囲内の面積でみると、日本は世界第6位の海洋国家という別の側面が見えてきます。この排他的経済水域ということを基準に考えるなら、そこにある鉱物資源の活用はできないものかという問題意識に当然突き当たります。
 政府は2007年に「海洋基本法」を成立させ、2008年に海底資源の採掘などを柱とする海洋基本計画を策定しています。最近の調査によれば、日本の周辺海域には、メタンハイドレート等のエネルギー資源のほか銅、鉛、マンガン、コバルト等の鉱物資源、海洋微生物等様々な開発可能な資源の存在が明らかになりつつあります。

資源潜在力を産業とするための技術革新と旗印

 この日本が秘めた可能性を、単なる夢物語に終わらせないためには、国内に眠る廃家電等のリサイクル技術の高度化や、海洋資源探索のための探査・採鉱技術の高度化などで、例えば「10年後の資源大国日本を目指す」といった旗印が必要です。深海での鉱物資源開発は世界的にも未踏の領域で実現には大きな壁が立ちはだかっているからです。
 そのため、こうした壁に対してのリサイクル技術、探査・採鉱ロボット技術などを中核とした新たな産業の勃興と、その実現による希少金属の安定確保こそが今後の日本の経済成長のためには必要でしょう。
 そして、そこに超精密微細な部品や製品を供給するのが長野県産業なんだという立ち位置も確保しておきたいところです。

 まさに閉塞感の時代どころか、空に航空機、宇宙に人工衛星、深海に探査ロボットと長野県産業にとって挑戦すべきフィールドは無限に広がっています。

(2009.02.26) 

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