世界を覆う大不況に対峙する県内企業(2009.01.27)

これまで経験をしたことのない厳しい経営環境 

 昨年9月にアメリカの大手金融機関リーマン・ブラザーズが破綻して以降、世界の実体経済は、急激な悪化をみせており、長野県経済にも甚大な影響を及ぼしている。
 こうした中、県内への影響を探るため、企業経営者の経営環境に対する景気認識や厳しい経営環境への対応状況などについてアンケート調査を行った。
 まず、経営者は現在の経営環境について過去の不況時と比べてどの程度と感じているのか、つまり、これまでの様々な不況、「1970年代のオイルショック」、「1985年の円高不況」、「1990年のバブル崩壊」、「2001年のITバブル崩壊」などの中で、いつ頃が最も厳しい経営環境であったのかをたずねた。
 結果は「現時点」の回答割合が53%とダントツで高く、二番目の「2001年のITバブル崩壊」の11%をはるかに超えた。今回の景気悪化は、これまで経験したことのない厳しい経営環境にあることがわかる。
 業績面でも厳しい様子が鮮明になっている。2008年度の対前年の売り上げ見通しでは、全産業でおよそ7割の企業が売り上げは減る見通しという回答となっている。
 特に、製造業では厳しく、4割の企業が、「売り上げが2割以上減る!」という見通しとなっている。

急場をしのぐための対応は 

 当面の対応策としては、「コスト削減(人件費以外)」という回答割合が最も高く、次いで「受注、販売先の開拓・再検討」、「給与・賞与の減額」、「設備投資の中止・先送り」など。
 売り上げが急速に縮んでいくという急場をしのぐためには、まずはコストをできるだけ削減し筋肉質にし、併せて売り上げを維持するための受注、販路開拓などの努力をはらっていることがわかる。

中長期的視点から考えて「不況期こそ経営革新の好機」

 現在、注力している中長期的な経営戦略としては、「収益性向上」、「売り上げ・シェア拡大」のほか「顧客満足向上」、「品質向上・技術力向上」、「人材確保・育成」が上位となっている。
 今後の厳しい経済環境の中で多少売り上げが下がっても収益を上げるための体質強化や、それを可能とする「技術力の強化」や「人材の育成」に注力している姿がうかがえる。

 また、顧客のニーズをつかみ、顧客に満足してもらえる事こそ好業績企業となる重要な要素だが、この時期に「顧客満足向上」に向けた多くの企業努力からは長野県企業の健全な姿がみてとれる。
 さらに、今後注力したい、対応していきたい中長期な経営戦略をたずねると、「人材確保・育成」が最も高く、次いで「財務体質強化」、「収益性向上」となっている。
 まさに企業は人である。人材のスキル向上なくしては企業の次なる飛躍も望めない。好況の多忙な時期に注力できなかった人材育成こそ今取り組むべき最大のテーマと考えられる。
 実際、最近、幾人かの企業経営者のお話をうかがうと、「あたふたしても始まらない。全ての業種が悪いのだから、ここはひとつ腹をくくり、今まで出来なかった人材育成や技術開発に取り組み、次の景気回復時に備えたい」という声が多くなっている。
 また、私は月に一度、SBC信越放送の『明日を造れ!ものづくりナガノ』というテレビ番組で、県内の卓越したものづくりの現場をお伝えしているが、その中で「航空宇宙分野」に挑戦しているとある企業の社長さんの言葉には、大変に元気づけられたので紹介したい。
 「不景気を過ぎたときには元の形に戻るのではなくて、新しい何かが起こるかもしれない。だから、新しい舞台で主役になれるような状態を目指して頑張らないといけないんです」、さらに「この不況の時期だからこそ実に面白い。事実は苦しいんですけどね。この苦しさを乗り越えたときに新しいチャンスが巡ってくると僕は思いますね」と、地域の企業同士で連携し、技術を磨き、人を育てながら、新たな事業分野に向けた燃える思いを語っていただいた。
 襲い来る嵐をしのぎ、次の回復局面では主役となる長野県産業の未来図が目に浮かぶ思いがした。

(2009.01.27) 

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