深刻化する食糧問題について(2008.06.10)

食糧価格高騰と4割の自給率 

 日本の食料問題というのは非常に難しいテーマです。問題提起ということでご覧ください。
 毎日の報道で見るとおり、食料を取り巻く国際環境が非常に厳しくなっています。代表的な穀物価格は非常な勢いで高騰しています。小麦、大豆、トウモロコシの国際価格はこの2年程で2倍以上になっています。日本はお金があるため、価格が高騰してもなんとか買うことができていますが、どの国もそうとは限りません。カリブ海に浮かぶ小さな島国ハイチでは、価格高騰により暴動さえ起きているようです。
 しかし、承知の通り、日本の食糧自給率がカロリーベースで遂に4割を切った(39%)ことを考えますと、いよいよ「お金があるからいいや」とばかりは言っていられない状況です。                            

 日本の台所は海外で起こった食料価格の高騰の影響をダイレクトに受け続けることになります。そして、今後しばらくは、成長著しい中国、インドなど新興国での食料需要の急増による食料価格の高騰に付き合わざるを得ません。

徐々に低下してきた日本の自給率

ちなみに世界の先進国の自給率をみますと、オーストラリア237%、カナダ145%、米国128%、フランス122%、ドイツ84%、イギリス70%、イタリア62%となっています。先進国の中では日本だけが群を抜いて低い状況ということになります。政府は2015年度までに自給率を45%にするという目標を掲げていますが、これを達成しても先進国で最下位は変わりません。
 どうして日本はこんなに自給率が低いのでしょうか。実は日本の自給率も昔から低かった訳ではありません。1960年代には70%を超えていたのです。しかし、食生活の欧米化に伴い低下してきました。日本人が米を食べなくなってしまい、自給率95%の米の消費がここ40年ほどの間にほぼ半分になったことに加え、輸入飼料を使う肉類の消費が増えたほか、麦や大豆の輸入依存度が高まったのが主な要因です。
 要するに、食の欧米化という国民の食のニーズに、国内での食糧生産が対応してこなかったということが、今日の食糧自給率低下のひとつの原因なのだということが言えるでしょう。

野菜・果物に特化する長野県農業 

 そうした中、わが郷土長野県の自給率はどうでしょうか。少なくともドイツと同じ8割程度には、いや少なくともイギリスの7割程度にはと思いたいところです。
 ところが、農林水産省が発表した2006年度の都道府県別食料自給率を見ると意外な数値に驚きます。長野県の自給率はなんと僅か53%と全国で19位、イタリアの6割にも及ばない状況です。高い県から見ていくと、北海道の195%、秋田の174%、山形の132%、青森の118%、岩手の105%とカロリーベースでの自給率が高い都道府県には、日本の穀倉地帯が居並んでいます。つまり、米を多く作っている県の自給率が高いということです。
 一方、長野県では、米は全農産物生産の2割に過ぎず、7割を野菜や果物が占めています。そのため、カロリーベースで見た場合、カロリーの低い野菜や果物が多いため自給率が低い結果となっているのです。
 長野県の気候を活かして品質の高い野菜、果物に特化してきたというのが長野県農業の姿でしょう。それはそれでひとつの方向性と見ることもできます。しかし、一方で少し山村部を歩いてみると耕作放棄され、荒れた農地が多いことにも気がつきます。全国でも有数の放棄率です。耕作放棄された農地は、水を涵養したり、洪水を防止するなどの多面的機能を失うことになります。問題は多いと考えるべきでしょう。
 こうした増加する耕作放棄地の問題も併せ、日本・長野県の食糧自給率というものについて考えてみる時期にきているのだと思います。

(2008.06.10) 

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