25周年を迎えた東京ディズニーランドと長野県観光(2008.04.22)

25周年を迎えた東京ディズニーランドに長野県も学んでみよう 

 今月の15日に東京ディズニーランドが25周年を迎えた。陳腐化するどころか益々パワーアップしているから驚きだ。1983年の開園当時993万人の来園者でスタートした東京ディズニーランドは毎年来園者が増え続け、2001年に開園したディズニーシー効果もあり2006年には2,581万人と25年の間に実に2.6倍へと来園者を増やした。
 一体、東京ディズニーランドの何がすごいのか。そこから長野県観光地が学べることはないのか。考えてみたい。

中途半端でない完成度が東京ディズニーランド・ブランドを創り上げている   

 1つには、とにかくこのテーマパークの完成度が高いということだろう。東京ディズニーランドは当初から総事業費1,800億円をかけて、完璧なテーマパークを作り上げた。人気の基本はこの中途半端でない施設やその中のキラキラした商品であることは間違いない。品質の高さには大人も楽しめ、子供だましの遊園地とは別物だ。そして、特に象徴的なのが完全に日常と切り離された空間づくりに成功していることだろう。外から中は見ることができないし、中から外も見ることができない。外の世界から完全に遮断された「夢と魔法の世界」を創り上げている。なんとなれば東京ディズニーランドは自らを遊園地ではなく野外劇場としている。従業員はステージで演じる「キャスト」で、入場者は舞台を見に来た「ゲスト」という設定だ。もちろん、ミッキーマウスやくまのプーさんは人が入ったぬいぐるみではない。ミッキーマウス、プーさんそのものなのだ。
 2つには、東京ディズニーランドがブランドとなっている点だ。もともとあるディズニーの物語をイメージ以上に東京ディズニーランドでは成長させ、東京ディズニーブランドを作っている。人はブランドを認めると日常では使わないお金の使い方をする。普段は1円、2円の節約に汲々とする節約タイプの奥さまもディズニーランドでは入場料、食費、お土産代などで1万円以上を軽々と使う。ディズニーランドでは庶民のお財布も「夢と魔法の世界」なのである。
 3つには、そのリピート率の高さで、9割を超えている。来園者10人のうち、9人以上が2回以上来ているということだ。誰でも周りには一人か二人10回以上行ったことのあるツワモノもいる筈だ。それは、東京ディズニーランドが常に変化をしているからだ。1983年の開園以来、ほぼ毎年1つのアトラクションを追加してきている。そして、園内やホテルでは数ヵ月単位でさまざまなイベントが企画されている。そのため、行く度に新たな発見がある。来る人を決して飽きさせない。言うなら、これが観光地が生き残るための必須の条件だ。現に東京ディズニーランドが新設してきたアトラクションは、チエを総動員して構想に3年から5年をかけるのだという。ハードを支えるソフトには、スタッフの並外れた努力が凝縮されている。。

長野県観光はどうか~良い商品・飽きない変化・ブランド化はできるのか。結局は人の努力やチエの力 

 こうした中、長野県の観光地の動向はどうか。長野県に来る観光客は、長野五輪の年には1億人を超えたが、2007年には9千万人にまで減少している。さらに統計を見ると、一人当たりの消費額も3,000円少々と東京ディズニーランドの三分の一程度の額と現実は厳しい。
 あまりに偉大な先生ではあるが東京ディズニーランドから学んでみるなら、並外れた努力を注いだ「商品の作り込み」と「リピーターの確保」ということになろうか。長野県にも素晴らしい自然という商品は既にあるので、「来る度に新たな発見」があるような飽きられない空間を作り、それをリピーター作りにつなげていきたい。
 周りを見渡せば県内にもこうした観光地がないこともない。軽井沢と上高地だ。軽井沢は1886年にカナダ人宣教師ショーによって国際的避暑地として見出され、以後外国人や有名人が集う避暑地としてステータスを維持しているし、また上高地は1898年にイギリス人宣教師ウェストンにより世界中に紹介され上高地というブランドを形成した。その後地元の努力によりそのブランドイメージが維持されてきている。そして、双方とも四季折々のさまざまな自然を見せてくれ決して飽きさせない。特に上高地などは、行くとほとんど霧の中だ。それが晴れた時の感動は忘れられない。そして、「もっと見たい、体験したい」という思いにさせる。軽井沢も同じような変幻自在な自然環境を持っているし、最近では大賀ホールやショッピングモールなどの都市的アメニティも充実してきた。
 われわれは、東京ディズニーランドに学び、軽井沢や上高地の誘客力を地域全体に広げることが重要なのだと思う。そして、地域や観光地に働く人々が単なる従業員から「キャスト」となって、「ゲスト」をもてなす。結局は、人の努力勝負の部分が大きい。長野県観光地は、これからいかに変化を創造していけるのか。変化は自然である以上に人の努力やチエなのである。
 地域の商業や観光業が低迷する中、地域産業の起爆剤として、今更のようだが観光地の努力やチエが問われている。東京ディズニーランドに負けてはいられない。

(2008.04.22) 

関連リンク

このページに関するお問い合わせ

産業調査

電話番号:026-224-0501

FAX番号:026-224-6233