上りだした物価に対する長野県民の意識と行動(08.04.08)

6割の県民が物価上昇を実感 

 長野県の3月の消費者物価指数は、2005年を100として101.2、前月に比べ0.6%上昇しています。また、前年同月に比べても0.9%上昇しており、いよいよ物価上昇の兆しが見え始めているようです。
 こうした状況に対する県民の意識や対応はどのようなものでしょうか。今回は長野経済研究所が県内世帯を対象に実施した「平成19年12月消費動向調査」からその結果を報告しましょう。
 まず、最近購入した物の価格について、「1年前と比べどのように変わったと感じているのか」をたずねたところ、「上がったと感じる」との回答は6割を超えています。半年前の調査では同回答は2割程度でしたので、物価の上昇を実感している世帯が急増していることがわかります。
 どんな商品が上がったと感じるかについては、「紙類」や「光熱費」など原油価格高騰の影響が大きい品目のほか、「鮮魚」「穀類」など食料品価格の上昇に対する実感が強くなっています。

物価高騰の影響で悪化する暮らし向き 

 こういった商品の「値上がり」は家計にどんな影響を及ぼしているのでしょうか。
 まず、ガソリン高騰の家計への影響をたずねたところ、半数の家計が「かなり影響がある」としており、約4割の家計が「やや影響がある」としています。ガソリンの高騰が9割を超える家計の財布を直撃していることがわかります。値上がりへの対応については、「安いスタンドに変えた」という回答が最も多く、次いで「燃費のいい運転法を心がけた」、「買い物や旅行での車の利用を抑えた」などとなっています。最近はインターネットで安いガソリンスタンドを検索するなど価格に敏感な対応が増えているほか、自動車の効率的利用や、外出の方法を見直す等の省エネ行動が高まっている様子が伺えます。
 次に、食料品価格高騰の影響についても尋ねたところ、「かなり影響がある」とする回答はまだ1割程度とガソリンに比べると少なく、約6割が「やや影響がある」としています。これへの対応は、「安い店へ変更」という答えが最も多くなっており、次いで「外食を減らした」、「普段よりも広告等で価格を比較するようになった」、「家の食事のメニューの工夫」など、節約の工夫がうかがえます。
 これらの結果、日々の暮らしのゆとりを聞いた「暮らし向き」は、昨年あたりからじりじりと悪化してきており、今回さらに悪化し4年前の2003年12月調査以来の低い水準となっています。今の景気は2002年から回復しており、それに沿って「暮らし向き」も改善されてきましたが、ここにきて家計の所得が伸び悩む中で、ガソリンや食料品などの高騰で生活への負担感が増している様です。  

問われる個人消費活性化のための構想力 

 現在はまだ値上げは食料品の一部にとどまっていますし、食料品価格の上昇分すべてが小売価格に転嫁されている状況ではなく「かなり影響がある」と感じる世帯も1割程度となっています。しかし、今月から牛乳が30年ぶりに値上がる他、食用油、しょうゆ、小麦等など生活に密着した商品が値上り、家計への影響は一層強まっていく模様です。各世帯の給与が上がらない中では、暮らし向きはさらに厳しくなるものと思われます。物価高騰に対し多くの人が節約をすると、そうでなくても悪い個人消費が一層冷え込むことになります。
 本来、企業がしっかりと稼いで、その稼ぎで給料が上がり、消費が増えるというまともな経済循環となることが望まれます。とはいっても、給料が上がっていくことはなかなか難しいのが現実でしょう。どうしたらいいのか。日本にある1,550兆円とも言われる個人金融資産などを活用し、消費を活性化させなくてはならない局面なのでしょう。どういうことかといえば、日本には世帯がおよそ5,000万ありますが、この世帯が今よりも余計に消費しようと思う制度や魅力的な商品・サービスが提供されることです。仮に1世帯あたり10万円今よりも消費を多くすれば、約5兆円個人消費が増え、日本経済は成長率が1%伸びます。20万円なら2%です。
 悲観論を論じ合うことに汲々とするのではなく、こうした閉塞感のある経済に風穴を開ける構想力が今、必要なのだと思います。

(08.04.08) 

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