休んで儲ける「8時間臨戦態勢」(08.03.04)

休んで儲ける秘訣?!という会社のお話しをお聞きした 

 先日、長野県経営者協会などが主催のトップセミナーで、岐阜県にある未来工業株式会社(電気資材メーカー/社員約800名/売上324億円/名古屋証券取引所2部上場)の相談役山田昭男さんという方の講演をお聞きした。その内容は「休んで儲ける秘訣」。この会社は年間140日も休む(正月休みは20日間、ゴールデンウイークは11連休、夏休みは10日間、残業ゼロ!)のに、経常利益率が業界平均の倍に当る10%以上という高収益企業だという。どうしたらそんな事が可能なのか。「楽して、儲ける!」(中経出版)という山田相談役の著書もあるので、それらも参考に「休んで儲ける秘訣」を考えてみたい。

どうしてそんなに休んで儲かるのか 

 この会社あらゆることが徹底している。
 設立当初から、お客さんに喜んでもらえる製品を作るためには、何が何でも差別化が必要だと差別化を徹底してきた。他社とまったく同じものは絶対に作らない。どこかに必ず違いをつけてきた。例えばスイッチボックスのネジ穴は他のメーカーが全て2つだから、当社は4つにした。それだけで、柱に留めやすくなり電気工事業者にウケてヒット商品になった。アイディア企業なのである。工場内には「常に考える」とういう看板が10メートル毎に掲示してある。しかし、いくら考えろといったところで、アイディアはおいそれとは出てこない。そこで、アイディアを出す仕掛けとしてユニークな提案制度を考えた。社員は提案しただけで500円、採用されれば報奨金が最高5万円。数打てば当る。結果、年間1万件以上の提案があり、毎年400以上の新製品を世に出している。今、1万6千点ぐらいの商品があるそうだが、全商品、差別化しており、差別化できないものは作らないと徹底している。
 コスト削減も徹底している。「私はどケチだ」と山田相談役は著書で宣言している。廊下の電気もつけないことは当然のこととして、社内の蛍光灯には全て紐のスイッチがついていて、社員ひとり一人が管理している。ドアノブにも下に「押す」と書いてあり、回さない。両手に荷物を持っている場合など、その時間が勿体ないということらしい。こうした冗談みたいなケチ振りが、コスト削減を強力に推し進めている。人件費で考えると、高い残業代を社員に支払うよりも、残業を減らしてコストを下げた方が会社の利益にはプラスということになる。そのため基本的に残業はゼロ。4時55分には会社には誰もいない。
 実は残業がないということは社員にとって大変にありがたいことだ。コスト削減が社員のやる気も生み出している。遅くまでダラダラと働かされているという不満がこの会社にはない。「社長の仕事は社員の不満を消すこと」なのだそうだ。
 そうは言っても、年間140日も休みを取るためには、お客さんとよほど良好なコミュニケーションがとれていたり、お客さんからの注文をかなり正確に把握していなければできることではない。そのため当社では、お客さんからの注文を予測して、生産量を管理するシステムを構築している。コンピュータが1日単位で需要を予測し、注文から原料手配までをつないでいるのだ。これも社員の「常に考える」結果である。
徹底的に休みを取るために、取れる方法を徹底的に考えた結果だと言える。  

差別化としての労働時間の短縮が会社を強くした 

 他社が左を向けば右を向くというような徹底した差別化。その結果として、働き方も差別化を図ってきた。それが徹底した労働時間の短縮だろう。
 考えてみれば、日本企業の敵は今や中国やインドなど巨大な国だ。日本人1億人に対し敵は数十億人規模という未曾有の戦いの場に我々は引きずり出されている。ここまで働く人数に差があると、我々日本人が束になって1年間徹夜して働いても絶対にかないっこない。
 残るのはチエ。頭脳勝負しかない。テストの前日など猛烈に勉強の効率が上がったことなど誰でも覚えがあると思うが、人は時間に制約があると信じられないような力を出せる。集中して、脳ミソに汗をかくことで初めて価値が生み出せる。
企業にとって勤務時間内はいつもテスト前日だ!というような切羽詰った状態で、最大のチエが出せるような仕組みづくりが求められる時代となっている。

(08.03.04) 

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