困った時の「笑」頼み(2008.02.19)

行過ぎた悲観論はろくな事がない

 最近はサブプライムローン問題、株安、食品問題等で日本列島はすっかり悲観論一色だ。こうした問題に対し本質的な解決策を探ることが必要なことは言うまでもないが、必要以上な悲観論が蔓延している。景気の気は気持ちの気というように、必要以上の悲観論は経済にとって百害あって一利なし。こんな時こそ「明るい気持ちの効用」というものを思い出したい。
 人というのは困った問題に出会うと、気が動転して冷静でいられなくなる。これでは、解決できる問題もできなくなる。また、こうした行過ぎた悲観論が株価を低迷させ、消費を一層冷え込ませている。
 重要なことは、まず、冷静になること。そのために必要なことのひとつが「笑う」こと。
笑いの効用としてはちょっと極端な例だが、病気を笑いで克服したというアメリカのノーマン・カズンズ氏というジャーナリストの例を紹介したい。
 彼は1990年に75歳で亡くなったが、50歳の時に「膠原病(こうげんびょう)」という、本来なら体を守るはずの免疫システムが逆に自分の身体を攻撃するという病気になり、体中に痛みが走る症状となった。そして、専門医から「回復の見込みは500に1」という絶望的な宣告をされた。そこである程度医学知識のあったカズンズ氏は、悲観論に陥ることなく“笑い”で治療することを決意し、ビタミンCを採りながら、コメディー映画やユーモア本で笑うことで、本当に病気を克服してしまった。
 これが世界的に話題となり、その後いろいろな"笑い"の研究が行われ、彼もそれを「笑いと治癒力」(岩波文庫)という本にまとめている。

「笑いと治癒力」の内容の一部を紹介すると

 「脊推と関節の骨が一本残らず火がついたように痛みながらあおむけに寝ているのは、面白いどころの騒ぎではない。そこで私はまず手始めには、こっけいな映画がよかろうと思いそれを知人から取り寄せて見た。効果はてき面だった。ありがたいことに、十分間腹をかかえて笑うと、少なくとも二時間は痛みを感ずることなく眠れるという効き目があった。笑い鎮痛効果が薄らいでくると、私はまた映画を見て大笑いをすると、もう一度しばらく痛みを感ぜずにいられることが多かった。笑いがわたしの身体に好い影響を及ぼしているとすれば、組織の炎症に対する抵抗力がそれによって高まるはずだ。そこで愉快な小ばなしを聞く直前と、それから数時間後とに血液の測定を行ってみた。すると膠原病を悪化させる物質が少なくとも5ポイント低くなっていた。その数字の差自体はそう大きくはないが、しかしそれは長い間続き、どんどん良くなっていった。わたしは、「笑いは身体の薬」という昔からの説に医学的な根拠があるということを知って、嬉しくてたまらなかった。そして、1週間ほどで症状が改善し始め、半年でもとの編集長の職に復帰した。」(原文を一部変えています)

厳しいからこそ笑ってみせよう

 当然に「笑い」は全ての病気を治したりするものではないが、少なくとも次の3つの効果は明らかにされている。1つにノーマン・カズンズ氏の例に見る様に、鎮痛作用をもつエンドルフィンという脳内物質が増加し、痛みをある程度抑えられる。2つに自律神経の働きが安定し、精神が落ち着く。3つにストレスを押さえ込む右脳が活性化され、リラックス効果がある。
 つまり、「笑う」ことで気持ちに落ち着きが取り戻せるのである。冒頭述べた通り、人は落ち着いた状態になって初めてコトに対処することが可能となる。引きつった顔を無理やり笑顔にするだけでも効果はあるらしい。顔で笑って心で泣いてという芸当はそうそうできるものではない。
フランスの思想家アランは「悲観は気分のもので、楽観は意志のもの」とも言っている。笑おうなんて言うと、すぐに「軽率」、「ノー天気」、「極楽トンボ」などという声も聞こえてきそうだが、今年みたいな経済が厳しいと言われる年こそ、無理にでも「笑って」景気回復を図りたい。

(2008.02.19)

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