労働力減少に対する秘密兵器は?(2008.01.22)

日本の最も確実な将来像は人口が減少し労働力が不足するということ 

 日本のこれからを考える場合に最も重要なテーマは、人口が減少することですが、ここで経済の重要問題として考えなくてはならないこととしては「労働力」をどうするのかという点です。
 例えば、長野県の場合、働く対象とされている15歳から64歳までの人口は、2020年までに約20万人減少すると予測されています。さすがに20歳前や60歳以上では働く人は少ないので、このうち仮に6割が働くとした場合、長野県ではここ10年ほどの間に12万人ほど働く人が減少することになります。

労働力減少の秘密兵器「専業主婦」 

 ここでひとつの問題提起として専業主婦の皆さんの労働力というものに注目したいと思います。
  国勢調査で2005年時点での人口を見ますと、長野県の15歳以上の女性で専業主婦と考えられるのは約25万人です。この内、働き盛りの20歳~49歳は約9万人。つまり、単純に考えるとこれらの女性が労働市場に登場してもらえれば、12万人の労働力不足に対する心配というものは相当部分解消すると思います。当然、働くということは、働く意欲とか仕事に対する適性・能力が最も重要となりますが、ここではあくまで数字合わせとして考えた場合、労働力問題を解決するひとつの方向として考えてもいいでしょう。
 では、なぜ、20歳から49歳に専業主婦が9万人もいるのでしょうか。ここには日本特有の理由があります。日本の場合、女性は出産・育児にあたり、仕事との両立が難しくなることや社会の慣習として、仕事を続けることをあきらめて家に入ってしまうのです。そのため、出産・育児期に働く女性の割合が減少するというのが大きな特徴となっています。この特徴というのは、外国との比較でみると明らかです。アメリカ、中国、フランス、スエーデンなどでは出産・育児期に働く女性の割合が減少してはいません。つまり、育児期も普通に働いているのです。  

女性が働くためには「夫の協力」・「残業ゼロ」  

 育児期の女性が働くために必要な事は何でしょうか?経済的な話とはやや外れますが、まずは家庭の理解、それも夫の協力が必要となります。子育ても分業しなくてはとても女性がもちません。
 そして次に必要なことが、受け入れ側の企業の仕事の仕組みです。それは、基本的に残業を前提としない仕事の仕組みです。残業を前提とした仕組みや風土が浸透してしまっている企業では育児中の女性は働けません。誰もいなくなった保育所で待つ子供を案じながら残業をするというのは、母にとっては酷なことです。従って、そうした企業では女性が子供を持ったら辞めざるを得ないということになってしまいます。
 働く女性が増えると子供がさらに減ってしまうのではという声もよく聞くところですが、総務省の調査をみますと、一人の女性が一生の間に産む子供の数を表す合計特殊出生率を都道府県別に見た場合、女性が働いている割合が高い地域ほど出生率は高くなるという傾向が見られます。
 このように、残業のない仕事の仕組みは女性の社会参画を向上させます。そして、子育て期に働く女性が増えれば、労働力人口の減少という問題をある程度解決する上に、人口減少に歯止めをかけることにもつながるのではないでしょうか。  

(2008.01.22)

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