長野県にとってのロボット産業の可能性(2007.12.11)

ここ数年増えつつある教育の場でのロボット 

 先日、テレビをみていたら阿波踊りを巧みに踊るロボットやバック転をするロボットを見かけた。また、先週の新聞ではトヨタ自動車がいよいよ生活を支援するパートナーロボットを開発し、2010年の実用化に向けた実証実験に入ったとの報道も。ロボットコンテストの開催も良く聞く。
 長野県でも、先月の4日には、全国高等専門学校のロボットコンテストが長野市で開催され、また、10日には千曲市で長野中学生ロボットコンテストが開催された。
 工場で動いていただけのロボットが最近、身の回りや教育の場に増えてきている。

日本はもともとロボットには非常に強い  

 現在ロボット生産額のほとんどは車や電気製品の組み立てなどに使う産業用ロボットである。実は日本はロボット大国で、溶接や搬送などに使う多関節ロボットの世界シェアは約50%。全体では、日本の2007年のロボット生産額は約7600億円で、2008年も以降も4%近い成長を予測している。
 長野県でも産業用ロボットやその部品の出荷額シェアは全国でトップレベルにある。
 日本がロボットに強い理由としては、ひとつに高度経済成長期の人手不足解消に外国人ではなくロボットを使い始めた事から始まり、最近では、自動車や家電産業などの高品質化を可能とする生産設備として大きく貢献している。工場などにロボットを入れるかどうかは、人件費より安いかどうかで決まるが、長い間、人件費が高いといわれた日本のコスト削減の姿が、現在のロボット大国日本の理由なのかもしれない。
 また、二つには、日本では「鉄腕アトム」や「ドラえもん」に代表されるようにロボットに対する抵抗が少ない。欧米がロボットと対立するイメージとは随分違う。

強いロボット産業を生活の場で活かして大きな産業へ 

 こうした中、ロボットが身近になってきた理由として、ロボットを工場から出して、警備や危険作業、介護など日常的な労働を補佐できないだろうかという新たなパーソナルロボットによる国興しの構想が浮上している。経産省でも2010年を普及段階、15年を本格普及段階とし、多くの技術開発プロジェクトを進めている。
 この背景として、1つに、日本は世界に例をみない人口減少高齢化に突き進むという現実がある。50年後、日本の人口は今より3千万人減り、4割が65歳以上という高齢化社会に向け着実に歩んいる。労働人口が減少し、どのようにして労働力を得ていくのかという深刻な問題がある。2つに自動車に次ぐ日本のリーディング産業としてロボットというものが真剣に検討され始めている。
 工場内での産業用ロボットとしては市場は数千億円でとどまるが、生活ロボットという使途が開発されれば2025年にはおよそ8兆円の巨大市場に成長することも予測されている。 こうなるためには、多くの技術が必要だ。人間で言えば目・鼻・耳といった五感を受け取るためのセンサー機能をはじめ、センサーから受け取る情報を処理するための脳にあたる高速CPU・人工知能、筋肉・骨にあたる駆動部分、そしてエネルギー源としての高性能電池などのハイテク技術が積み上げられており、総合的な技術力が試される。
 こうした点に対する長野県の潜在力は先に書いたとおり非常に大きい。長野県がこれまでに培った精密・超微細・高機能な部品の開発・製造ノウハウに加え、最近ではセンサに関する研究会も各地で発足している。
 長野県らしいといえば林業の生産性を上げる林業ロボットの開発なども夢がある話だろう。

 ロボット立県長野県というのも素晴らしい未来像だ。                 以上

(2007.12.11)

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