17年振りの食料品の値上げから見る経済の変化(2007.11.01)

17年振りに食料品が値上がってきているが

 最近、17年振りと言われる食品の値上がりのニュースが報じられている。つまり1990年振りだ。値上がったものは、即席麺や菓子パン、マヨネーズ、ビールの他、食用油、果汁ジュース、コーヒー、ハム、ソーセージ、ツナ缶、食パン、カレー、トイレットペーパーなど。

 この17年振りの食品の値上げから経済の変化というものを考えたい。

今回の値上がりの背景は外からのもの、17年前の値上げの背景は内からのもの

 先ず、今回の値上げの背景を考えてみると、要因としては4つ上げられる。1つは、原油高による燃料価格の高騰。2つには、バイオ燃料ブームによるトウモロコシを始め大豆や小麦のなどの穀物価格の高騰。3つに、世界第2位小麦輸出国のオーストラリアでの100年に数回といわれる大干ばつによる穀物の不作。4つに途上国の工業化による穀物需要の増大など。

 つまり、干ばつによる「穀物の供給減」に加え、バイオエタノールの増産や途上国の急激な工業化による「需要増加」などで穀物価格が値上がり、原油高でさらにコストが跳ね上がっている。こうした「海外の事情」により、食料品の値上げを余儀なくされているという図式だ。

 一方、17年前の1990年はどのような状況だったのか。

 いろいろ調べてみると、当時もトウモロコシの生産地で干ばつがあり、食用油の値上げがあった。しかし、そのことよりもバブルの真っ只中で人件費、輸送費など多くの生産コストがじりじりと上昇基調にあったことが大きい。こうした流れを受け、食料品の値上げがされた。石油価格はどうだったかというと、この年、湾岸戦争があり一時値上がったが、全般的には落ち着いていた。

 つまり、17年前の値上げは、どちらかと言うと国内の物価全般がジリジリと上がってきたことに対する「国内要因による値上げ」だったと言える。

つまり、この17年で何が変わったのか

 このように17年前に比べ今回は国内物価が上がらない中で、「海外からの輸入原料の値上げ」による要因での食料品の値上げとなっている。つまり、この17年の間に起こった大きな変化としては、大雑把にいうと、途上国が工業化に成功し日本経済に対する海外の影響が圧倒的に大きくなったこと。はやりの言葉でいうと経済のグローバル化。

 途上国の工業化というものは、従来、日本、米国、EUでおよそ8億人だった世界経済を、中国の13億人、インドの11億人等々を加えた約30億人の巨大な世界経済にした。

 このことは膨大な数の労働者を生むと同時に人々が働いてお金を手にするため巨大な市場を生んだ。つまり巨大な市場というのはお金を手にした中国やインドの人々が皆日本人のようになりたいと消費を始めることで、資源に対する需要を急激に高め、資源の価格を急騰させることになる。こうしたことの大きな流れの中に今回の食料品の値上げもある。

 したがって、今後も食糧品の価格は高止まりし、地球温暖化で天候不順が増えることから不安定になることが予想される。食料品の6割を輸入に頼る日本にとってこれは厳しい状況で、食糧自給に関する議論が盛んになることを期待したい。

(2007.11.01)

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