森林もたらす恩恵と森林を巡る深刻な問題について(2007.08.21)

我々に多くの恩恵をもたらせてくれる森林

 猛暑で毎日暑いが、木陰などの涼しさにはホッとすると同時に自然の力には感謝もする。

 森林の力は偉大だ。木陰で我々を癒してくれるなど心や体の健康に大きな役割を果たす他、根を頑丈に張ることで土砂崩れや洪水を防いだり、清らかな水を作ってくれる。また、最近では地球温暖化の原因となっている二酸化炭素の吸収源としても注目されている。京都議定書で日本が6%の削減を義務付けられているが、その3分の2近くを森林が吸収する計画となっている。これらは森林の多面的効果と言われ、経済的に評価すると長野県の森林だけで約3兆円の効果があると言われている。もし森林がなく洪水を防いだり、水を作るとなると3兆円掛かると言う事。

 このような我々の生活を広く支えている森林だが、今、この森林が大変なことになっている。

 そこで、長野県の森林の恩恵とともに森林を巡る深刻な問題について考えてみたい。

深刻な状況にある森林

 長野県は県の約8割を森林が占めており、北海道、岩手県に次いで全国3位の森林県である。この内、3割は人工林と言って、戦後人の手で植えられたもので、カラマツが半分を占めている。

 これが、今、樹齢40年から50年を迎えている。人工林のカラマツなどの針葉樹は、樹齢60年を超えるとほとんど成長しなくなる。そのため、それまでに間伐などの手入れをしておかないと、木が混みすぎて枝が枯れ、光合成も十分にできないため、幹が太くなれず、根も十分に張ることができなくなってしまう。

 ところが、今まで、この間伐などが十分に行われてきたのかというと、外国の木材使用の増加や、国内木材価格の低下で林業経営が厳しくなる一方で十分になされてこなかった。

 したがって、これからの10年の間に集中的に間伐などの手入れをしないと、資源として価値がなくなり、戦後植林した苦労が水の泡になってしまう。極端な言い方をすると「山が死んでしまい、3兆円に相当する機能が果たせなくなる」という大変な時期に差し掛かっている。

どうしたらいいのか

 では、どう間伐を含め山の手入れを進めていくべきか。

 難しい話だが、中長期的には間伐費用が継続的に出るような儲かる林業が長野県内で再生される事。そのためには、長野県の木材が多く使われるようになり、同時にそうしたニーズに応えられるような良質な木材を作れる体制が必要。したがって、家を作るなら長野県の木材を使いましょうというような我々の行動も必要となるが、長野県でも県産材利用の木造住宅への助成や、木材を燃料とするペレットストーブの推進等多くの施策が実施されている。

 しかし、集中的に間伐を実施していかなくてはならないとなると、こうしたやり方には限界も。そこで、他県を見ると、森林整備のために「森林環境税」など広く県民に費用を負担してもらうための方法が高知県を始め24の県で既に導入されている。

 こうした方法も解決策のひとつだが、先ずは広く県民に森林の置かれた状況や、森林の多くの機能を理解してもらうことから始める必要があろう。

(2007.08.21)

関連リンク

このページに関するお問い合わせ

産業調査

電話番号:026-224-0501

FAX番号:026-224-6233