そろそろインフレへの心構えが必要かも?(2007.07.17)

今の物価状況は

 物価について最近の状況から確認しておきたい。

 長野市消費者物価指数の6月の数値は、平成17年を100として100.8となっているが、前の年と比べた場合には19ヶ月振りに下がっている。足元の状況はデフレ脱却も疑問といった段階にある。こうした段階で、インフレなんていうとかなり気の早い話ということになるが、最近物価を下げていた経済の要因に変調の兆しがみえる。その変調の兆しについて考えてみたい。

そもそも、どうして今まで物価はずっと上がらずにきたのか

 1つに1985年のプラザ合意以降の円高だ。1ドル260円が一気に160円になり100円台前半での推移となった。通貨が高くなるということは、安くモノが輸入できるということだから、安定的な価格で輸入を続けられたということ。

 2つにバブル崩壊以降の不況が物価を抑えたという面がある。そして、それは買いたいとする量が少ないにも拘らず生産能力が常に大きくなっており、供給過剰状況となりモノの価格を下げた。

 3つに原材料価格が安定していたこと。1970年代の2度の石油ショック以降、80年代に入って原油や金属、食料などの原材料価格は右肩下がりにずっと下がってきた。

 最後に4つめとして、隣国の中国の急激な経済発展が挙げられる。中国が市場経済に入ることで安い労働者が大量に生まれた。彼らにより作られた安いモノの輸入が日本の物価を下げた面がある。

ところが、ここに来て、これらの条件は変わってきているようだ

 1番目の円高だが、最近は世界の通貨に対する円相場の下落基調が続いている。要するに円安が続いている。日銀が公表した「実質実効為替レート」によれば6月は93.4と、1985年の「プラザ合意」時の94.8を下回る円安水準に到達したらしい(1973年3月を100)。海外で買うものが円換算して高いと感じる度合いが、20年以上前の水準に戻ってしまったということらしい。

 2番目の長らく続いた不況という点も、最近の世界的な好況を背景とした輸出拡大で生産設備はフル稼働状態という企業も多くなり、需給の緩みによって価格が下落する例は少なくなってきている。

 3番目の原材料については、安定的だった石油製品や金属などの原材料価格は中国などの活況を主な要因として上昇しており、原材料などの製品の川上部門では既にインフレが起こっている。

 そして、中国の安い労働者も、逆に彼らが単なる労働者から巨大な買い手となってきており、電化製品や食料など身の回りの製品の値段がジリジリと値上がる傾向をみせ始めている。豊かになると自動車を買いたい、テレビを買いたい、美味しいモノが食べたい、という一般大衆のニーズが膨らみ、それが世界中で爆発し始めている。そうなると、原材料にとどまらず、あらゆるモノが供給不足になることが予想される。モノが足りなくなると、当然、諸物価が高騰し、インフレになるというサイクルが出現する。

 インフレというには気早な議論だが、このまま物価が下がりつづける理由もなくなったと言える。

 世界経済の変化から、経済の潮目の変化を冷静に察知しておきたい。

(2007.07.17)

関連リンク

このページに関するお問い合わせ

産業調査

電話番号:026-224-0501

FAX番号:026-224-6233